環境車として今や世界の誰もが認知されるEV(電気自動車)だが、案外、誤解に基づく過大評価なのかもしれない。


EV泣き所の航続距離を長くするにはそれだけ電池が重くなる​

 5月19日付日経新聞1面の、「重くなるEV 環境に負荷」という特集記事は、僕たちの知らないEVの環境への大きな負荷を解き明かして見せた。

 その主因は、EVとして避けられない車の重量化である。

 EVは、ガソリンの内燃機関の代わりに充電した電池でモーターを動かす。構造はガソリン車に比べて3分の1くらいに簡潔になるが、その代わり搭載した電池の重量が半端でない。しかもEVの泣き所の1つの航続距離の短さを克服するために航続距離を長くすればするほど搭載する電池は重くなる。すなわち車体も重くなる()。

 

 

 それによりタイヤの摩耗が進みやすくなり、それに伴う粉塵が増える。生成・排出される粒子状物質は、ガソリン車に比べて3割も増えるという。


重量化する一方、ガソリン車の倍も​

 近年、ガソリン車も含めて乗用車は大型化している。自動車の重量は、重くなる一方だ。排気量2000㏄超の3ナンバー車は、販売に占める比率は2003年の26%から23年には44%に高まった。それに伴い、クルマの平均重量は、この間に100キロも増え、1400キロになっている。

​​ それがEVでは、搭載電池のためにさらに重くなる。航続距離最長を謳うスターリニスト中国・上海蔚来汽車(NIO)のET7(下の写真の上)の重さはガソリン車の約2倍の2600キロもある。アメリカ、テスラのサイバートラック(下の写真の下)は最軽量モデルでも2995キロだ。​​

 

 

 

 確かにクルマが重いと、ぶつけられた時に耐性は強いが(それが3ナンバー車が好まれる理由の1つだ)、自分がぶつけた時の衝撃力は重くなればなるほど大きくなる。


粉塵リスクをどうするのか​

​ しかし前記のように、重い車体は、それだけタイヤに負荷をかけ、路面との摩擦で生じる粒子状物質PM10は、EVで3割も増える。より細かい微粒子状物質PM2.5も同様だ()。​

 

 

 走るクルマがEVばかりになると、粉塵リスクは無視できないほど大きくなる。粉塵リスクは、スモッグや大気汚染ばかりでなく、歩行者や沿道の住人の肺を冒し、健康被害を高める。

 放っておけば、環境車の触れ込みは、羊頭狗肉、もしくは詐欺に近い謳い文句になる。

 繰り返すがEVは重い電池を搭載するために、重くなるのは避けようがない。この面からもいずれ普及にブレーキがかかることになろう。


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