縄文杉は屋久島を代表する杉の木だ。推定樹齢は4000年。そのとおりだとすると、縄文時代後期初頭ということになる(写真)。
しかし上には上がある。
地球上最長寿の生命のブリッスルコーンパイン
アメリカ・カリフォルニア州のホワイト山脈の標高3000メートルの荒地に生えるブリッスルコーンパイン(マツの1種)の個体「メトシェラ」は、もっと古く4856年という(写真=左の木)。1957年に研究者が調査用のサンプルを採取した時点で4789歳であり、紀元前2832年に発芽したと推定されている。
ただしその後2012年の調査で同山脈にさらに古いブリッスルコーンパイン個体が見つかったと発表されている。樹齢は5063年とされる。
ホワイトマウンテンには、樹齢が4000年を超えるブリッスルコーンパイン個体が、まだ10数本知られている。
いずれにしろブリッスルコーンパインは地球上の生命で最長寿ということになる。
脊椎動最位長寿のニシオンデンザメは400歳弱
動物ならこうはいかない。
北大西洋に棲むニシオンデンザメ(写真)は、地球で最長寿の脊椎動物と言われるが、以前に計測された体長4.93メートルと5.02メートルの大きな個体はそれぞれ335歳、392歳と推定された(19年5月14日付日記:「世界最長寿の脊椎動物=ニシオンデンザメは寿命400歳、性成熟するのは150歳!」
を参照)。つまり400歳が限界のようだ。
脊椎動物は、大型になればなるほど長寿の傾向があるが、最大20メートルになると言われるジンベイザメも130歳という長寿個体が知られているが、それでも寿命ではニシオンデンザメにはかなわない。
アイスランドの二枚貝個体は507歳
ニシオンデンザメが長寿なのは、第1に低海水温の海中であまり動かずに暮らしているので代謝が少ないことがある。野生動物が動物園などで飼育される個体よりも長生きできないのは、天敵や競合相手に捕食されたり、競合したりするためだが、ニシオンデンザメは、大きな体で海の底にいるので天敵もいない。
ちなみに軟体動物の二枚貝の中には、アイスランドガイのように非常に長生きな種もいる。最も長寿の記録は8.6センチの個体で507歳という個体「明」がいる。ただし、この個体は既に死んで標本になっている(写真)。寿命が1桁まで分かったのは、貝殻の「年輪」を調べたからだ。
こちも動かないので、低代謝だったのだろう。
荒れた地でゆっくり生きて
さて冒頭の縄文杉とブリッスルコーンパインである。こちらが動物より1桁長い寿命なのは、動物と違って代謝と無関係で、天敵などないからだろう(幼木は、草食動物に食われるが)。
上掲写真の「メトシェラ」は、一見、枯れているように見えるが生きている。厳しい環境に棲むので、ゆっくりとしか生長せず、それで長寿だったのだろう。一帯の年降水量は30ミリくらい、と「砂漠」に近い。勢いよく生長などできない。また周囲に木が生えておらず、山火事被害に遭うこともない。
こうした過酷な環境に生きる木本植物には、ナビブ砂漠に生きる落葉更新しないウェルウイッチア(奇想天外)があるが(写真)、本種も寿命が長く、少なくとも1000年、長いものでは2000年を超える個体もいるとされる。
木本植物は、ヒトの手が入らないと、1000年、2000年と長生きするものもいる。縄文杉も、屋久島の奥の山中だったので、伐採されることを免れた。
昨年の今日の日記:「函館の旅(12):レンタル電チャリで函館市内を走る、赤レンガ倉庫とペリー広場」