日本からついに液晶パネルメーカーが無くなる。

​ 国内で唯一、テレビ向けの大型液晶パネルを作るシャープが、巨額赤字に耐えかねて子会社の堺ディスプレープロダクト(写真)の工場を9月末までに停止するという。技術者は、画像半導体に注力するソニー系に出向する方向だ。​

 


時代の流れか、テレビ高級機種は有機ELに、量販品は中国産液晶に代替​

 同工場は、かつて「液晶のシャープ」を自負したシャープが、2009年に4300億円の巨費を投じて設立した。一時は、三重県の亀山工場と並んで、世界の液晶パネル市場をリードする勢いで、それまでのブラウン管テレビを駆逐するもとになった。同社の液晶パネルを搭載したAQUOSは、我が家の2代続いた50インチ大のテレビとして収まっている。

​ しかし戦略商品として巨額投資を続けた液晶パネルは、少しずつテレビ高級機種には有機ELに、量販機種にはダンピング中国勢の液晶パネルに侵蝕され、ついて大赤字を出すに至り、16年にシャープが台湾の鴻海精密工業(写真)に買収されるもとになった。​

 

 

​ 有機ELディスプレー(写真)は、自発光のため液晶ディスプレーよりさらに薄くでき、また応答速度が早いためスポーツ番組視聴に向き、さらに視野角が広く、斜めの方向から観ても映像の変化が少ないなど、品質面では液晶ディスプレーより優れている。液晶ディスプレーがリードするのは、価格の安さだけで、それなら補助金漬けでダンピング攻勢をかけるスターリニスト中国製の独壇場となる。


あの韓国のサムスンすら液晶から撤退した​

 話は前後したが、買収後、シャープに乗り込んできた鴻海の創業者兼会長だった郭台銘氏と郭氏の右腕の戴正呉氏のもとで血のにじむようなリストラを断行、一時は堺ディスプレープロダクトの経営は持ち直したが、皮肉にもシャープの液晶がテレビのブラウン管を追い出したように、シャープの液晶は前記のように有機ELと中国製ダンピング液晶で土俵を割ることになった。

 液晶パネルをテレビディスプレーに使う時代は、終わったのかもしれない。表示画面の美しさなどでは前記のように高精細液晶ディスプレーでも有機ELには及ばない。だから、かつて日本勢のライバルだった韓国のサムスンですら液晶パネルから撤退している。

 かつてテレビ画面で一時代を築いた液晶ディスプレーは、量産品を除いて市場から消えてなくなるだろう。量産品は、補助金でダンピング攻勢を続けるスターリニスト中国産に任せることになる。


小型液晶も風前の灯火​

 かくて日本の液晶パネルメーカーは、スマホ向けの小型液晶ディスプレーに特化していたジャパンディスプレイ(JDI)だけとなった。しかしそのJDIも、13日に発表した決算で、443億円の赤字で、赤字は10年連続、25年3月期も赤字見通しだ。上場以来、11年たっても1度も黒字化できていないから、JDIの見通しも暗い。

 それを考えると、液晶の時代の終わり、を今一度噛みしめざるをえない。


昨年の今日の日記:「ウクライナ防衛軍の本格反攻を前に乱れるテロリスト国家ロシアの足並み:プリゴジンのあからさまな軍批判と国内強硬派のプーチン批判」