​ 寒の戻りのような3月が終わって4月になり、やっと桜が開花した。それが散り始めたと思ったら、急に各地が夏日に見舞われるようになった。昨日は日本海側の主な都市で、今年初めて真夏日となり、秋田市などで4月の観測史上、最も高くなった(写真)。あまりの暑さで桜を観ながら、半袖で氷菓を食べる人たちが相次いだ。

 

 こうした時ならぬ暑さで、今夏もまた猛暑、酷暑になるのかと早くも鬱陶しい思いにとらわれる。

 昨年夏は、本当に暑かった。まさに沸騰地球である。

 気象庁の長期予報によると、今夏も猛暑になりそうだ。まだ東京では40℃になったことはないが、そう遠くないうちに40℃になる時がくるだろう。いや、それは今夏の話かもしれない。


123年間で4℃も気温が上昇した東京​

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書によると、2050年には地球の平均気温は産業革命前から2.35℃も上がるらしい。

 日本に限っても温暖化は顕著で、気象庁によると1900年(明治33年)には年平均気温13.6℃だった東京が、昨年(1923年)には4℃も高い17.6℃になっているという。

 東京近郊に住む僕の身の回りでも、今は霜柱が立つことはなくなった。外の水道蛇口が凍結することもなくなった。

 さてIPCCの予測どおり、東京の年平均気温が2℃上昇するとすると、夏はどうなるのだろう?


2050年には8月の東京の猛暑日は24日!?​

​ 暑かった23年の東京では8月の31日間で、猛暑日(最高気温が35℃を超えた日)が9日間だった(写真:東京の猛暑)。それが、平均で2℃上昇すると仮定すると、一気に24日に増える。残りの7日間も、あわや猛暑日の日ばかりだ。​

 

 

 こんな暑さに、人々は耐えられるだろうか。そもそも外出する時、冷房付きの車に乗らない限り、熱中症の危険にさらそれそうだ。

 特に暑さに体が適応しにくい高齢者の熱中症リスクは高まる。国立環境研究所の研究によると、今世紀中ばに熱中症による65歳以上の救急搬送者数は、前世紀終わりの20年間よりも1.88倍に増えるという。

 高湿度の殺人的な猛暑は、若者でも危ない。もう夏の高校野球甲子園大会は、札幌で開催するか冷房の使える京セラドーム大阪で行うしかないだろう。さもないと、選手か応援団にいずれ死者が出るかもしれない。


1万1700年ぶりの急激な気温上昇期​

 僕たち、自分の生きている間に急激な気候の温暖化を見るのは、実は1万1700年ぶりという希有な時かもしれない。

​ 氷河期末の気候が温暖化に向かう最中の、約1万2900年前に地球は「寒の戻り」の「ヤンガー・ドリアス期」に入ったが、それが1万1700年前頃に突如として急激な温暖化に転じた。数十年間、つまり1人の人間の一生の間に、7℃も気温が上昇したという(:矢印の所がヤンガー・ドリアス期の終結した時期)。子どもの頃にツンドラの環境に育った旧石器人は、老境に入った時に故郷が草原と森林環境に変わったことに戸惑ったに違いない。​

 

 1万1700年ぶりの急激な温暖化は、東京のような都市気候化と合わさると、恐ろしいことになるのだ。


昨年の今日の日記:「「昭和初期に絶滅してしまった日本在来犬種『高安犬』を愛惜した戸川幸夫の書『高安犬物語』を読む」