​​ さて、前回冒頭の疑問である。ハマスは、なぜ無謀にも近いイスラエル奇襲攻撃を行ったのだろうか。イスラエルが、これほど徹底的にハマス掃討のガザ攻撃を仕掛けてくるとは予想していなかったのか?(下の写真の上=ガザで作戦を行うイスラエル軍;下の写真の下=空爆されたラファ)​​

 

 


イスラエル国内に暮らす200万人以上のアラブ系​

 それは、あり得ない。これまでイスラエルはハマスやヒズボラの小規模テロ攻撃には、数倍、数十倍の報復を行ってきたのだ。

 これまでナチ・ドイツによるホロコースト、帝政ロシア期のポグロムなどでおびただしい死者を出してきたユダヤ人がやっと建国したイスラエルなのだ。この国内が、大規模テロ攻撃を受けてもイスラエルが何もしないとは、いくらアホなハマス指導部でも考えなかっただろう。イスラエルの大規模反撃は、覚悟の上だったと思われる。

 ここで、ヒントになるのが、イスラエル国内に暮らすアラブ系の存在である。彼らは、イスラエル議会にも議席を送っているほど、多数いる。

 イスラエル総人口約868万人のうち、アラブ系は200万人以上、約25%を占めている。大部分は1948年のパレスチナ戦争後にもイスラエルに留まったアラブ人とその子孫である。

 彼らは、イスラエル国内では2級市民扱いながら、今も官公庁や病院などで広く働いている。


アラブ系の蜂起を期待した?​

​ ハマスは、無邪気にも、大規模一斉奇襲攻撃を加えれば、日頃、差別されているアラブ系が自分たちの攻撃に呼応して立ち上がる、その結果、イスラエルは国家破綻に追い込まれる、と夢想していたのではないか(写真=ガザのハマス戦闘員、この戦闘員も既に戦死している可能性が高い)。今日、無辜のガザ市民が爆死し、飢餓に喘ぐような大規模攻撃があるとは予想していなかったに違いない。​

 

 

 確かに夢想である。ハマスの攻撃にもかかわらず、イスラエル国内のアラブ系はイスラエル打倒に全く立ち上がろうともしなかった。むしろハマスの攻撃に、自分たちの近くに住むユダヤ人を助けようと駆けつけ、救助しようとしてハマスに殺されたアラブ系市民さえいたのだ。

 つまりイスラエル国内に住むアラブ系もまた、戦争を望んでいなかったのだ。


客観的な状況分析すらできなかった甘い夢想のもとに​

 ここに、戦争前のガザでのハマス専制支配の脆さが露呈している。彼我の力量の考量と客観状況の分析すら満足にできなかったほど、一部のハマス指導部の視野の狭い甘い夢想のもと、ハマスは地獄の道へと突っ込んだ。ガザ市民が巻き添えで塗炭の苦しみをなめさせられなど、どうでも良いことだったのだろう。

 真珠湾攻撃を仕掛けて日米開戦に踏み切った日本軍部と同じ過ちである。

 明けない夜がないように、終わらない戦争もない。

 ガザ戦争が終わった時、事態を悟ったガザ市民は、自らの手でハマスをガザから叩き出すに違いない。


昨年の今日の日記:「メジャーで今年から実施されたピッチクロックが試合を早める;5日の大谷は空前絶後のダブル違反」