​​  国際石油市場で、原油価格がジリジリ上がっている。OPEC+に加わるテロ国家ロシアの自主減産もあるが、ロシア国内西部の石油施設へのウクライナのドローン攻撃も響いている(下の写真の上=3月13日にウクライナのドローン攻撃で炎上するリャザンの精油所;下の写真の下=16日の攻撃で炎上するサマラ州のシズラニ精油所)。​​

 

 


ドローン攻撃で石油精製能力を一時12%低下させる​

 この23日も、西部サマラ州の別の製油所にウクライナのドローン攻撃があり、火災が発生した。これまでウクライナはロシア国内の石油関連施設に対する攻撃をエスカレートさせていて、今回の攻撃はウクライナ国境から800キロ以上も離れており、これまでで最も遠距離のものだった。

 ウクライナ国防省情報総局によると、ロシア西部の製油所や石油貯蔵施設を過去1年で10数カ所攻撃し、今月中旬に行った3施設への攻撃では、ロシアの石油精製能力を一時12%も低下させたという。

 影響はロシア国内の燃料価格に及び、ガソリン価格は今月、半年ぶりの高値に急騰した。夏の旅行シーズンが近づくなか、プーチン政権は国内供給を維持するためガソリンの輸出禁止措置を今月から復活させた。


軍事施設から防空システムを石油関連施設に再配置迫られる​

 ウクライナの狙いはロシア国内の石油関連施設を攻撃することで、ロシア政府の財政を圧迫し、ロシア軍の兵站を複雑にし、一般のロシア人の不満を高めることだ。一定程度の効果は上がっている。

 もっと重要なのは、従来のウクライナのミサイル、ドローン攻撃がクリミアなどの軍事施設だったものが、石油関連施設に広がっていることだ。

 テロ国家ロシアは広大な領土を持ち、それがウクライナに対する大きなアドバンテージの1つになっているが、攻撃を受けると、防御の対象が広大になるという弱点になる。つまり広すぎて守り切れないのだ。

 ウクライナ軍にとって、こうしたドローン攻撃により、ロシア側が貴重な防空システムをウクライナの前線から引き揚げ、国内の石油関連施設に配置し直すことを余儀なくされる可能性がある点だろう。ウクライナは、最近、ドローンの増産に拍車をかけているが、ロシア国内への越境攻撃に用いている国産の長距離攻撃ドローンは少なくとも15種類あるという。


インドへの地対空ミサイルシステムの輸出も延期​

 ロシアは防空の強化に必死になっているらしく、今年予定していたインドへのS-400地対空ミサイルシステムの輸出も最近、2026年に延期している。また、イギリス国防省によれば、ロシアはエネルギー関連施設にパーンツィリ地対空ミサイルシステムを配備する計画を進めているもようだ。

 ロシアは、製油所周辺の防護を強化するため、航空基地や港湾、指揮拠点などの軍事施設の防護を減らすことを容認せざるをえないかもしれない。そうなれば、これらの施設は現状より攻撃しやすくなる。


黒海艦隊にも打撃相次ぐ​

​ 実際、ウクライナ軍は23日、ロシアの支配するウクライナ南部クリミア半島セバストポリにある黒海艦隊(写真)の停泊地に大規模なミサイル攻撃を加えた。このことは、ロシア側が最良の防空システムを広く薄く広げて配置することになった場合、どういう結果になるかを暗示している。​

 

 

 ウクライナ空軍の空中から発射されるイギリス製ストームシャドー巡航ミサイルかそのフランス版のSCALP(スカルプ)-EG、あるいは地上から発射されるウクライナ国産ネプチューン巡航ミサイル、あるいはこれら3つすべてが使われたようだ。この攻撃により、黒海艦隊のロプーチャ級揚陸艦「ヤマル」と「アゾフ」に損害を与えた可能性がある。もし2隻が撃破されたとすれば黒海艦隊の揚陸艦隊は全滅にさらに近づいたことになる。


昨年の今日の日記:「去りゆく日銀の黒田総裁、日本沈没を防いだ功績に心から『ありがとう』」