​ 香港立法会は19日、国家への反逆やスパイ行為、反乱の扇動などの取り締りを強化する「国家安全条例」を、わずか2週間足らずの異例の速さで可決した(写真=国家安全条例の可決を拍手して喜ぶ立法委員や香港政府関係者)。立法会は、民主派が全排除されているので、全会一致での可決だった。23日に施行、とこれも異例の速さである。​

 

 

犯罪行為が曖昧だらけ、当局の意のまま​

 スターリニスト中国は2020年6月に国家安全維持法を制定しているから、これで漏れた網の目をさらに絞った。最高刑は無期懲役だ。

 この条例はスパイ行為や国家(もちろん香港を含むスターリニスト中国本土)の秘密の窃取、国家への反逆、反乱の扇動、国家安全への外国勢力の干渉を取り締まる。

 問題なのは、条例の定める犯罪行為の定義は曖昧で、治安当局の意のままに適用できる。例えば「扇動の意図を伴う行為」で、何が「意図」だったのか判断するのは治安当局だ。平和的な抗議行動を呼びかけただけで、国家の安全を脅かす意図があったと当局が判断すれば、逮捕できる。

 外国人旅行者や外資系企業社員も、無関係ではない。国家安全維持法は「外国勢力との結託」を取り締まり対象としたが、新条例では外国からの「干渉」を犯罪行為と明記している。具体的に何が干渉なのかも不明確だから、いくらでも外国人を逮捕できるだろう。

 

容疑すら明らかにされずに逮捕される恐怖​

 スパイの疑いをかけられるリスクも高まる。昨年3月に拘束されたアステラス製薬の日本人社員が具体的にどんな罪を犯したのか、いまだに明らかにされていない。香港に観光旅行に行った外国人が、いきなりスパイ容疑で逮捕される可能性がある。

 すでにスターリニスト中国本土への渡航を、一部の研究者やビジネスパースンは控えているが、同様の動きも顕著になっている。

 施行前日、オーストラリアは自国民の香港への渡航について「意図せずに拘束される可能性がある」と警告を発している。

 相変わらずの平和ボケの日本の外務省は、邦人の香港渡航に注意喚起すらしていない。

 ただ既に大手旅行社は、スターリニスト中国へのツアー募集をほぼ停止しているが、香港でもそうなるだろう。

 

香港に日本人ももう行けない​

​​ 香港は、日本人にとって手軽な観光旅行先として人気があった。海外旅行初心者がまず出かけるのは、近場の香港、台湾、韓国だったが、これからは香港にも気楽に観光旅行は行けないだろう(下の写真の上=香港の街中)。日本でのように、スターリニスト中国や香港の悪口を言おうものなら、国家安全維持法と新条例でいかようにでも拘束・逮捕される(下の写真の下=地下鉄駅で警戒するポリス)。​​

 

 

 

 僕は、スターリニスト中国にも香港にもまだ行ったことがない。香港はいつか行ってもいいかな、と4年前までは思っていたが、こんなブログを書いていると分かったら、香港でも逮捕されるだろう。

 香港が西側の自由世界の窓として賑わったのは、もはや過去のことになった。経済界からの脚も遠のく。ホテル、オフィスビルは、閑古鳥が鳴くことになるだろう。

 習近平は、なぜこれほどにビクつくのか分からないが、不動産バブルの崩壊で、地方政府や地方銀行の破綻も間近となっている。さらに外国人の脚を遠のかせて、何を得たいのだろうか。


昨年の今日の日記:「楽聖ベートーベン、ゲノム解読で肝臓病のリスクを高める変異を確認、浴びるほど飲んだワインも死を早める」