韓国の合計特殊出生率が0.72と過去最低を更新した。2月28日、韓国統計庁が発表した。前年の22年も、同出生率が0.78と過去最低を更新したことから問題になったが、23年はさらに低下(悪化)した。


低出生率の日本よりもはるかに悪い​

 韓国の出生率は40年前の1984年に初めて2を割り込み、その後、多少の改善はあったものの低下基調を続け、ついに0.72をつけた。このままでは、0.5を割るのも遠くないかもしれない。

 合計特殊出生率は、1人の女性が生涯に生む子どもの数で、これが2.1以上でないと、人口減少に至る。

​ ちなみにわが日本も、先頃、合計特殊出生率が低下し、過去最低になったと問題になったが、それでも1.26(22年)である。韓国の出生率の低さは、OECD諸国の最低、すなわち世界最低でもある(21年の平均で1.58)(グラフ)。​

 


 

ソウルはさらに低く0.55​

 韓国の特殊な、異常な低出生率は、首都ソウルのそれが23年で0.55(前年は0.59)とさらに異常値を出していることから、原因がだいたい推測できる。

​​ ソウルと周辺の衛星都市を含めたソウル都市圏の人口集中度は20年で約50.1%と、こちらの集中も異常だ。つまりそれだけ狭いソウル都市圏に人が集中しているのだ。東京よりも高いとされるマンション価格・家賃の高さは、頷ける(韓国、特にソウルの住宅事情に関しては、4年前に日記を書いたが、状況は緩和されていない。20年2月15日付日記:「アカデミー賞受賞の『パラサイト』の描く『ヘル朝鮮』と半地下室の住居」を参照)(下の写真の上=漢江沿岸の超高層マンション群。みな「億ション」だ。下の写真の下=大水で水没した半地下住居。ソウルには低家賃のこの種の住宅が多く、しばしば水没する)。​​

 

 


出生率低下は8年連続​

 賃貸住宅も、家を借りる際に家主にまとめて支払う韓国特有の保証金制度があり、日本円にして数百万円から数千万円をまとめて払わねばならない。親の援助がなければ、若者たちはアパートも借りられないのだ(保証金制度については、前記日記参照)。

 若者たちは、高すぎる住居費のために、結婚できない、結婚しても子どもを作れない。特に前任の革新系大統領の文在寅の失政で、ソウルのマンション価格は文の在任中に8割以上も上がった。むろんこれに比例して賃貸料も上がった。

 もともと低出生率だったところに、文在寅の失政で出生率は底が抜け、18年には1を下回り、23年まで8年連続の低下となった。


ソウルの塾代は月8万円の異常高​

 ソウル都市圏だけでなく、異常な低出生率は全国的で、それは韓国のこれまた異常な受験過熱にある。世界に冠たる半導体・電子部品の生産国の韓国は、しかしその裾野が狭く、公務員とサムスンなどの超大企業以外は、事実上、低賃金で雇用も薄い。

 だから韓国人は、世界で一番、我が子を受験戦争に駆り立てる。そうしないと、3流大学なら卒業してもフリーターしか働き口が無いからだ。

​ そのため教育費は、高い。高校生の塾代は、22年には平均46万ウォン(約5万円)、ソウルに限れば月に70万ウォンを超す。塾に通うのは、日本と似て、小学校から始まるから、高い住居費もあって普通の親では負担できない(写真=ソウルの保育園。この子たちも間もなく受験戦争に参戦する)。​

 

 

 当然ながら夫婦共稼ぎで、しかも脱落しないために猛烈に働く。子作り・子育ての時間的余裕は無い。


人口減で誰が国を守るのか​

 日本と似て、韓国も、資源は乏しく、国民の勤勉さだけで、先進国入りしてきた。

 それが、高い教育費、高い住居費、女性の高い労働参加率となった。

 つまり韓国の異常な低出生率は、構造的なものと言える。革新政権も保守政権も、何とか出生率を上げようと、少子化対策に力を入れ、2006年から22年まで少子化予算として332兆ウォン(約37兆円)を投入した。それなのに、前記のように効果が出るどころか、8年連続の出生率前年割れ、である。この間、生まれてくる子どもの数は半減し、23年の出生数は23万人となった(前年比1万9200人、7.7%減)。

 この人口減は、韓国の将来に危機的な状況をもたらすだろう。昨年12月、韓国統計庁はおよそ50年後の2072年までの推計人口を試算した結果を発表したが、合計特殊出生率が0.6~0.8で推移した場合、22年夏現在の5167万人が3017万人と4割以上減少するという。

 そうなったら、韓国社会は崩壊に瀕するだろう。

 それ以上に、安全保障でも重大な問題が生じる。少ない若者を根こそぎ徴兵し、それで北朝鮮ならず者集団に対処しなければならない。その時、韓国国防軍はちゃんと存在できているのか怪しい。


今の韓国は明日の日本、韓国の失敗に学ばない岸田のアホ​

 以上の韓国の超少子化は、明日の日本の姿でもある。

 これまで韓国の政権は保革を問わず、少子化対策の巨額の予算を振り向けたが、効果はなかった。日本の岸田バラマキは、「異次元の少子化対策」と称して、多額の予算を振り向けようとしているが、その財源として年6000億円を税金の他に徴収する。これは、働く若者層にも重い負担となるだろう。

 韓国政府は、これまで多額の予算で児童手当や多子世帯への補助金、不妊治療への保険適用などを行ってきたが、その結果が冒頭のような過去最低、世界最悪の合計特殊出生率0.78だった。

 岸田バラマキのやろうとしていることは、韓国の失敗例の繰り返しである。抜本的な構造改革に踏み切らない限り、日本も近い将来、1割れを招くに違いない。


昨年の今日の日記:「ラーメン1杯4000円、しまほっけ定食5000円のアメリカの外食、しかし物価は安く、給料は高い」