​ 旧ソ連構成共和国で、昨年9月のナゴルノカラバフ戦争で隣国アゼルバイジャンに完敗したアルメニアのパシニャン首相は、ロシアが主導し、アルメニアが加盟する軍事同盟CSTOへの参加を凍結したと表明した(写真:アルメニア-アゼルバイジャン戦争については、(2月27日付日記:「テロ国家ロシアがウクライナ侵略にかまけている間にザカフカス地方の一角で静かに進むロシア離れ;国家・民族の安全保障とは」を参照)。​

 

 

 アルメニアによるロシア離れが、また大きく進んだ。


アルメニア首相がロシアを公然と非難​

​ アルメニアは隣国アゼルバイジャンとの戦争で、ナゴルノカラバフに駐留していたCSTOの主加盟国であるロシア軍がアゼルバイジャンに何の支援もせず傍観していたと非難した。この戦争では、12万人以上のアルメニア系難民が、ナゴルノカラバフの故郷を捨て、難民となった(写真)。​

 

 

 アルメニアのパシニャン首相は22日、フランスのテレビ局へのインタビューで、ナゴルノカラバフ戦争ではロシアががCSTOの安全保障上の義務を果たしてこなかったと非難、そのうえでパシニャン首相は「我々は事実上、CSTOの参加を凍結した」と表明した。ただ、アルメニア国内にあるロシア軍の基地を閉鎖する考えはないとしている。


ウクライナ侵略に反対の立場を明言​

 パシニャン首相は、今月18日には、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について反対の立場を明言するなど、ロシア離れの動きを加速させていた。

​ 旧ソ連構成国のアルメニアは、1991年の独立後も安全保障や経済分野などでロシアの強い影響下にあるが、近年、ロシアのプーチン政権との対立を深め、欧米への接近を強めている。昨年9月にはアメリカ軍との合同軍事演習も行った(写真)。​

 

 

​ アルメニアが公然とプーチンのロシア離れを強めていけるのは、ロシアと国境を接していないことが大きい(地図)。西は民族的に対立するトルコと、東は交戦国であるアゼルバイジャンと接するが、北側は中立的なジョージアが緩衝国として存在している。その意味で、ウクライナやジョージアのように、直接攻め込まれる恐れはない。

 


アゼルバイジャンとロシアの結託には要警戒​

 警戒すべきは、アゼルバイジャンがロシアと結託して攻撃してくることだが、アゼルバイジャンにはロシアに義理立てする必要性も乏しい。下手にアルメニア攻撃を行えば、アルメニアが接近するEUとアメリカの経済制裁を受けるだろうから、衝突は避けたいだろう。

 だが中東の他に、ザカフカス地方も不安定であることは変わりない。


昨年の今日の日記:「ロシア侵略軍、イラン製ドローンを撃ち尽くしか、しかしドイツ誌はスターリニスト中国のドローン輸出も報道」