​ アメリカの民間宇宙企業、「インテュイティブ・マシンズ」の開発した無人の月着陸船「ノバC(愛称オデュッセウス:写真=月の近くを飛行する月着陸船ノバC)と月面着陸したノバC」がアメリカ中部時間22日夕方(日本時間23日朝)、月に着陸して地球との交信に成功した。​

 

 


アポロ17号以来、半世紀ぶりの月への復帰​

 民間企業としては初めてで、アメリカとしては、1972年2月に最後となった有人の「アポロ17号」以来、約半世紀ぶりの月への「復帰」となった。ただ通信状態は悪く、同社は状況を精査している。

 ノバCは15日にアメリカ南部フロリダ州からスペースXのロケットで打ち上げられ(写真)、22日に氷が存在するとされる月の南極近くに、ぶじ着陸した。

 

 

​ 打ち上げたインテュイティブはヒューストンを拠点しするスタートアップ企業。月に物資を送り届けるサービスをアメリカ航空宇宙局(NASA)に提供する。着陸船ノバCは高さ4.3メートル、直径1.6メートルで(写真=ヒューストンの本社で製作されたノバC)、最大130キロの荷物を運搬できる。今回はNASAの科学調査機器などを搭載した。​

 


21世紀に新興勢力台頭の中に​

 これまで月への着陸に成功したのはアメリカや旧ソ連などの政府による国威発揚としての着陸船だけ。

 だがその後、米ソによる月の開発競争は予算削減などで立ち消えとなり、人類が再び月面に向かい始めたのは21世紀に入ってからだ。

 21世紀の月面飛行は、スターリニスト中国、インド、日本のJAXAなどの新興勢力が担い、20世紀と趣を変えた。日本のJAXAのSLIMも、今年1月、無人船が月への軟着陸に成功した(1月22日付日記:「月面着陸機SLIMが着陸に成功、世界で5カ国目」を参照)。


月に眠る資源の争奪​

 かつての宇宙大国の旧ソ連の後継国家のロシアは23年8月に半世紀ぶりの復権を目指したが失敗、アメリカも今年1月、別の民間企業が着陸を目指したが、燃料漏れが発生して失敗している。今回は、やっと面目を施した。

 20世紀の月打ち上げブームと異なるもう1つの意義は、月に眠るとされる豊富な水という資源開発を睨むことだ。水は、月面に滞在する飛行士の飲料水になるだけでなく、太陽光発電による電気分解でロケット燃料の水素を製造できる。火星に向かう月面基地として、欠かせない資源だ。

 NASAは日本やESAなどと協力して再び月に宇宙飛行士を送り込む「アルテミス計画」を進めていて、同計画でNASAは月に物資を運ぶ役割を民間企業に委託する方針だ。インテュイティブなど民間のスタートアップ企業は、NASAと契約して着陸船を開発した。

 今のところ、月の資源に関する国際条約は存在しない。先に取った者勝ちの状況だから、激しさを増すだろう。


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