​ 東南アジアなどの森林に生息し、遅くとも10万年前頃までには絶滅したと考えられている地球史上最大の類人猿ギガントピテクス(想像図)は、このほど中国科学院とオーストラリアのマッコーリー大学などの共同研究で、もう少し古い20万年前頃まで生息していたことが分かった。​

 

 

体重250~500キロも推定値のみ​

​ ギガントピテクスは推定身長3メートル、体重250~500キロの巨大な類人猿だ。ただし後述するように、ギガントピテクスの四肢骨などはまだ発見されていないので、あくまでも推定値だ(想像図)。​

 

 

 現在までギガントピテクスは3種に分類されているが、今回は中国南部で化石の見つかる「ギガントピテクス・ブラッキー」の絶滅原因を調査研究したものだ。

 研究チームは、中国南部の22カ所の洞窟で採取された化石を分析し、絶滅は29万5000年前〜21万5000年前に起きたことを突き止めた。

 その原因たが、絶滅時期の前から生息地域の森林の植物相が大きく変化したことも分かった。ギガントピテクスは環境の変化にうまく適応できず、食物を入手しづらくなって生息地域が狭まり、絶滅に至ったと考えられるという。成果はイギリス科学誌『ネイチャー』に発表された。

 

森の類人猿は化石は残りにくい​

​ 前述のように、ギガントピテクスの四肢骨など体幹部は未発見だ。だから化石記録としては、下顎骨の一部が4個と、おそらく1000個ほどの歯しかない(写真=ギガントピテクスの歯)。​

 

 

 

 これは、既に明らかになっているようにギガントピテクスが1000万年前頃にオランウータンと分岐し、100万年前頃の全盛期には東はインドまでを含む中国南部と東南アジア大陸部の深い亜熱帯森林地帯に暮らしていた。そのため森林の中で死亡したギガントピテクスの骨は、残りにくかった。歯は脊椎動物で最も硬い部分なので、辛うじて残ったに過ぎない。

 このことは、ギガントピテクスに限られることではない。オランウータンやアフリカのチンパンジー、ゴリラの化石が、ほとんど、または全く見つかっていないのも、彼らが森林生息者だったからだ。

 

残った歯も多くは「漢方薬」として飲まれた​

 それでもわずかに残った歯も、多くは「竜骨」として粉に粉砕されて漢方薬に消費されてしまった。そもそも1930年代に最初に見つかった歯の化石は、香港の薬局で竜骨として売られていたものだった。

 だから現在のところ、ギガントピテクスの解剖学的形状や習性については、ほぼ何も分かっていないというのが実情だ。

 難しいだろうが、例えば石灰岩洞窟に落ち込んだ骨が見つかることを願うのみだ。

▽参考:19年10月20日付日記:「東南アジアの絶滅した巨大類人猿ギガントピテクスを惜しむ;大きすぎて絶滅か」

 

昨年の今日の日記:「ロシア侵略軍、ウクライナに激しい攻撃かけるも手詰まり感が露呈、対してNATOのウクライナへの兵器支援増強」