​ 13日に投開票された台湾総統選と立法委員選では、スターリニスト中国の露骨な選挙介入が行われたが、総統選ではスターリニスト中国の毛嫌いする民進党の賴清徳副総統・蕭美琴氏のペアの当選と、失敗した(写真=勝利を喜ぶ賴清徳氏、右後方は蕭美琴氏;選挙結果を報じる台湾各紙)。しかしそれでも、一定の効果は発揮した。​
 

 

 

蔡英文氏再選時より260万票ほど少なく​

 第1は、当選しはしたが賴清徳・蕭美琴氏の得票率は40.05%に留まり、得票数も558万6109票に押さえられた。前回の蔡英文総統の得票数817万0231票(得票率57.13%)に大きく後れを取った。蔡氏の817万票という大量得票が再選時のもので、国民党候補らが弱すぎたということは割り引いても、スターリニスト中国の台湾国民への威嚇がある程度効いたことは間違いない。

​ 第2は、同時に行われた立法委員選(定数113)はもっと露骨な結果となった。与党・民進党が51議席の過半数割れとなり、第1党も野党の国民党52議席に奪われた(第3党の民衆党8、無党派2)()。​


 

立法院過半数割れは「賴総統」に痛手​

 過半数割れは、賴新総統にはかなりの痛手となりそうだ。この点、スターリニスト中国は祝杯を挙げているかもしれない。

 アメリカの大統領は議会で議決した法案の拒否権を持ち、議会に再議を求められ、再び議会が議決するには3分の2の多数が必要となるが、台湾の総統にはその権限がない。もしアメリカから供与される高度な武器購入費を組み入れた軍事費増を狙っても、国民党に阻止される懸念が高まる。第3党の民衆党の協力を求めざるを得ない。

 スターリニスト中国からの恫喝は、さらに高まる恐れがある。
 

農水産物の禁輸などで経済締め付け​

​ スターリニスト中国は総統選に先立ち、SNSでのフェイクニュースや気球を飛ばしたり、領空侵犯などの軍事威圧もあったが、それ以上に与党・民進党の伸び悩みと野党で親スターリニスト中国の国民党の躍進に効果を発揮したのは、経済的締め付けであった。特に民進党の地盤の南部の特産のパイナップルや高級養殖魚ハタなどの輸入禁止である(写真=台湾のパイナップル農家救援のためパイナップルを共同購入して支援する日台議員連盟の議員)。​

 

 

 今の日本の水産物の対中輸入禁止と同じで、スターリニスト中国への輸出に依存していた農家と漁民は大きな打撃を受けた。

 さらに選挙の直前に、繊維原料など12品目の関税優遇も停止した。
 

香港の二の舞を許さない!​

 今すぐ武力は行使できないが、あらゆる経済的締め付けで民進党を弱体化させる意図が露骨だった。何しろ台湾の貿易は、2023年で輸出の35%、輸入の20%を対スターリニスト中国が占めているのだ。

 だから台湾国民の中には、「中国といたずらに事を構えるのに反対、友好だ」と秋波を送る国民党の宣伝になびく層が出てくる。

 これに対しては、蔡英文総統後半期から注力している、対米、対日貿易を増やし、スターリニスト中国への貿易依存度をさらに下げることが必要になってくるだろう。

 テロ国家ロシアのウクライナ侵略のように、権威主義的国家が民主主義国を呑食しようとするのは、絶対に許してはならない。スターリニスト中国は、香港で成功体験があり、今後もあらゆる方面から台湾を引き込む策を繰り出してくるだろう。

 日本とアメリカは、台湾支援を強化する必要がある。


​昨年の今日の日記​:「感染爆発さなかのスターリニスト中国、初期の隠蔽と無理なゼロコロナ政策の強行の報い」