​ 数年前、NHK-BSプレミアムで、すごい光景のシーンを観た。ナビゲーターは、中央アジアのトルクメニスタンという国を訪れ、この国の様々な光景を案内した。その中に、カラクム砂漠のど真ん中に空いた小惑星の衝突したようなクレーターがあった。小惑星衝突のクレーターと違うのは、夜目にはっきりと分かる、真っ赤な炎が燃えているのだ(写真)。​

 

 

クレーターの直径は70メートル、深さ30メートル​

 まるで、砂漠に空いた巨大な松明のようであった。

​ 「ダルバザ・クレーター」という。直径70メートル、深さ30メートルもある(写真)。​

 

 

 

 

 燃えているのは、地中から噴き出す天然ガス、すなわちメタンガスである。

 それは、トルクメニスタンという国が、世界4位の埋蔵量を誇る天然ガスと関係する。

 何しろ2020年末に確認されているだけで、天然ガスは13.6兆立方メートルもあり、世界の埋蔵量の7.2%を占めるのだ。つまりトルクメニスタンという国の地下には、天然ガスが大量に埋まっている。それが、地下からヒビを伝って地上に漏れ出る。


半世紀前、アホな旧ソ連地質学者が穴を崩落させ、火もつけた​

 天然ガスの主成分は、温暖化効果ガスであるメタンガスで、二酸化炭素の28倍もある。おかげで大した工業力もないのに、トルクメニスタンは世界でも先進国並みの温暖化効果ガス排出国である。

 さて、ダルバザ・クレーターである。

 クレーターが出来たのは、半世紀ちょっと前の1971年という。旧ソ連構成国だったトルクメニスタン(当時はトルクメン共和国)でソ連の地質学者が天然ガス探査中に、突然、地面が崩落して出来た。内部から天然ガスが噴き出ていて、調査していた地質学者が周辺に拡散するのを防ぐために火をつけたところ、すぐ消えるとの予想に反して、消えなかった。現在も、火勢は衰えることなく燃え続けている。
 

消火する方法は無し​

 昨年、当時の大統領が、「消せ」と命じたが、西側の研究者も含めて消火作業を検討したが、妙案は出なかった。地下の天然ガスが燃え尽きるまで、燃え続けると予測されている。

 確かに利用もせずにムダに燃やして二酸化炭素を排出し続けるのは問題だが、それでもメタンガスのまま排出し続けるよりは、温暖化効果を低減できるだけに現状の方がマシだ。

 しかもダルバザ・クレーターは、「地獄の門」と通称され、トルクメニスタン1の観光地になっているという。

 僕は、8年近く前、エチオピアに行き、そこのアファール低地帯のダロール火山の熱水プールを観て、驚き、深く感動した。それとは違うが、ここも観てみたいとは思う。

 ただ人間の愚かさをあざ笑う記念碑でもあるから、わざわざ行くまでもないとは思わないこともない。


​昨年の今日の日記​:「『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』を読む、山本幡男とシベリア抑留⑥=完:没後33年まで五月雨式に届けられた7通の遺書」