思わぬ奇襲攻撃を受け、主に市民・民間人1200人以上がイスラム原理主義テロリスト「ハマス」に殺害されたイスラエルは、さぞかし怒り心頭に発しているだろう。

 7日朝のハマスの奇襲攻撃は、まさにイスラエルにとって不意打ちだった。

​ パレスチナ自治区ガザは、周囲をイスラエルの建設した高い壁に囲まれている。その壁を少なくとも7カ所破壊して、戦闘員が侵入してきた。戦闘員は、ゴムボートを使って海から、パラグライダーを使って空からもイスラエルに侵入した(写真)。​

 

 

 戦闘員1000人という大規模侵入は、初めてのことだった。
 

モサドも把握できなかったハマスの奇襲​

 怒りは、世界1の諜報能力を持つと自他共に認めるイスラエル情報機関「モサド」も同様で、ハマスに思うままに5000発ものロケット弾攻撃を許し、防空能力に大きな穴のあることを露呈したイスラエル軍も同様だろう。しかも1000人もの戦闘員のイスラエル領内への侵入を許した。それ以上に、支持基盤の反発をかったイスラエルのネタニヤフ首相も、大きな痛手を受けた。

​ この無差別奇襲攻撃と外国人を含む100人以上の民間人・兵士の人質をガザに拉致したことにより(写真=拉致された人質)、アメリカはもちろんだが、西欧各国も一斉にハマスを非難した。パレスチナへの同情心が強かった西欧の反応が、ハマスの無謀・非道な行動の戦略性の無さを示している。​


 

イスラエル軍、史上最大の予備役30万人動員​

​ 国民の怒りがたぎるイスラエルは、ガザへの大規模空爆を四六時中実施し、市民の死傷が相次ぐ(写真)。​

 

 

 

 7日には同国政府は、史上最大の30万人もの予備役動員を決めた。女性を含めて徴兵制のあるイスラエルでは、毎年定期的に予備役を召集して軍事訓練を施している。ウクライナを侵略するテロリスト国家ロシアの木偶の坊に近い予備役と、全く違う。イスラエル軍は、質量共に一挙に増強された。

 狙いは、もちろん封鎖するガザへの侵攻だろう。おそらく今回は、ハマスの1戦闘員まで根絶やしにするつもりの侵攻となる。すでにガザとの境界に、10万人規模の完全装備のイスラエル軍が配備された。

 空爆を受けるガザは、水、電気、燃料の大半をイスラエルに頼っている。そのイスラエルは、7日の決定で、すべての供給を絶つ「完全封鎖」を決めた。市民の苦境は、増す。
 

最も警戒する北のレバノンのヒズボラへの注意が集中​

 イスラエルが今回のハマスの奇襲攻撃を受けたのは、ユダヤ教の祝祭日で休日であったこともあったが、油断があったと言うしかない。

​ イスラエルが注意と戦力を集中させていたのは、北のレバノンを支配する同じイスラム原理主義テロリスト「ヒズボラ」だったからだ。ヒズボラは、1982年にイスラム原理主義国家イランの革命防衛隊によりレバノンで設立され、ほとんど無力なレバノン軍に代わってレバノンの軍となっている(写真=ヒズボラ兵士)。​

 

 

 

 国境を接するシリアを通じ、直接、イランから武器・弾薬の供給を得ている。イランから供与されたミサイルも持っている。軍事力も、ハマスよりはるかに上だ。

 ヒズボラとの戦闘では、2006年の第2次レバノン戦争で、イスラエル軍は大きな損害を出し、ほとんど成果成しに撤退し、事実上の初めて「敗北」を喫している。

 ヒズボラを警戒していたのは正しい選択だったが、南部のガザへの監視がおざなりになった。
 

対ヒズボラにも戦端が拡大すれば第6次中東戦争へ​

 現在のところ、ヒズボラはイスラエルに散発的なロケット弾攻撃を行うが、本格的な先端を開いていない。ヒズボラが対イスラエル戦争に本格参戦すれば、中東最強のイスラエル軍も苦境に陥るだろう。

 ヒズボラ対イスラエルの戦争となれば、背後にいるイランがイスラエルにミサイル攻撃を加える懸念もある。

 世界は、テロリスト国家ロシアのウクライナ侵略戦争に続いて、第6次中東戦争に巻き込まれかねない。

 最も懸念されるのは、この戦いに「止め男」がいないことである。


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