アメリカなど世界の金利高が少しずつ日本に波及しているが、いまだ超低金利環境であることに違いはない。これから日本もどんどん高金利になっていくという見通しも乏しい。

 そのせいか、金利高への不安から長く軟調だったREIT(不動産投資信託)も少しずつ値を戻しつつある。
 

香港だけがREIT暴落​

 REITにとって、高金利は大敵だ。金利が高くなると、国債利回り対してのスプレッド(金利差)が縮小し、それならノーリスクの国債を買おうという動きが強くなるからだ。3~4年前、REIT指数が2200を越えていた時(直近は1900ちょっと)、スプレッドは4%近くもあった(直近は3.5%程度)。

 実際、昨年末比では日本のREIT指数は4%高となっている。

 高金利のアメリカも少し値を戻しつつあり、同5%高、金利高の収まりつつあるオーストラリアは9%高だ。

​ それなのにひとり大幅安なのが、香港だ。香港REITは、昨年末比26%安と、暴落に近い()。​

 


 

香港REITの暴落の予見する先​

 株と違って、不動産を裏付けとするREITは、値上がりも株ほど無い代わりに暴落も無い。極端に値下がりしたら、不動産価値があるため必ず買いが入るからだ。

 日米豪のREITが堅調なのは、先行き金利高が続かないことをマーケットが予見しているからだ。しかしマーケットは、リスクもまた予見し、投資口価格(株価に相当)に織り込もうとする。

 香港のREITの暴落は、背後に控えるスターリニスト中国の巨大な不動産業がバブル崩壊で死に体になりつつあるからだ。ただ今のところスターリニスト中国本土の不動産バブル崩壊が香港に波及する気配はない。香港と本土とでは不動産の背景が異なるからだ。それでもなにがしかの負の影響をマーケットは織り込もうとしているのだろう。
 

国家安全維持法の強行施行がREITを衰退させた​

 ただそれ以上の負の影響は、3年前、2020年の香港国家安全維持法の強行施行だった。香港の自由と民主主義を押しつぶした同法は、多数の高学歴層・高所得層の海外流出を促した。彼らの香港脱出で、不動産も軟調になった。

​ 自由を無くしたことは、海外からの香港への不動産投資を危ぶませた(写真=香港の中心街に林立する高層ビル群)。​

 

 

 不動産市況に直結する香港経済の見通しも、同様に暗い。本土の経済がデフレ入りしつつあるのに、それとほとんど一心同体の香港だけが繁栄できるはずはない。

 その上に、金利高ときている。1年物金利は5%前後と、3月末から1ポイントも上昇した。これではREITを買えるわけはない。
 

投資家の資金と視線は香港からシンガポールへ​

 外国人投資家も、香港のREITと不動産を見限り、構造が似ているが自由のあるシンガポールに資金を移しつつある。

​ 香港の株式市場全体の動きを表す代表的な株価指数であるハンセン指数も、21年春には3万1500ポイント近くになったのに、今はやっと1万8000ポイント強である()。​

 


昨年の今日の日記:「エチオピア紀行(174):折り返しアディスアベバ便が到着遅れ、ヒヤリ」