武漢肺炎のパンデミックを上海などのロックダウン都市封鎖で強引に抑え込んだスターリニスト中国の経済回復がはかばかしくない。

 最近の経済動向を見ると、スターリニスト中国もかつてバブル崩壊後の日本のように、デフレに突入しつつあるのではないか、という観がしてきた。
 

不動産価格、下落​

 まず不動産価格の下落が始まっている。

 6月の主要70都市のマンション新築価格は、前月比0.1%の下落

 上海や北京のような「1級都市」でも前月比横ばいだ。

​ マンション価格がはかばかしくないから、売れ行きも鈍い。不動産シンクタンクの調査では、6月の主要50都市の新築取引面積は、前年同月比21%減だ(写真=販売不振で建設が一時中断されたマンション)。​

 

 

 スターリニスト中国の不動産業は、GDPの3割を占めるとされる。不動産価格が下落し、売れなければ、それに伴って買い換えられる家電製品や家具など耐久消費財も売れない。

 6月の消費者物価指数(CPI)は、家具や家電の価格は1.8%の下落で、自動車やバイクは4.3%も下げた。家賃は、昨年5月からずっとマイナスになっている。

 前年同月比は0%と横ばいで、欧米各国が連続利上げまでしてインフレ対策に血道を挙げているのと異質な状況だ。中国経済は貿易依存度が高く、食料もエネルギーも輸入に頼る割合が高い。これらが上がっているのに、CPIが横ばいなのは、もし世界インフレが収まれば、CPIもマイナスに転じ、デフレ経済に陥ることになる。
 

GDPの伸び率は大きく減速​

 さらに経済の伸びそのものが減速感を強めている。

 17日発表された23年4月~6月期のGDPは、前年同期比6.3%だった。一見、高成長に見えるが、これは前年同期が武漢肺炎パンデミックで上海などの都市ロックダウンのためマイナス成長になったからで、いわば低い水準からの伸びで、下駄を履かされたようなもの。前期の1月~3月期と比べると、増加率はたった0.8%だ。年率に直すと、3.2%。スターリニスト中国の党と政府が目標にする5%前後という低い目標すら下回る。

​ 経済がふるわないから、失業率も高止まりし、23年4月の若者(16〜24歳)の失業率は20.4%と、過去最高となった。実に5人に1人が失業している(写真=職探しをする若者たち)。6月末には大学生の卒業シーズンを迎え、彼らが労働市場に参入してくるから、さらに失業率は高まるだろう。​


 

株価も不振​

 むろん「経済の体温計」である株価もふるわない。上海総合指数は、3200当たりで行ったり来たりで、日本の1990年のバブル崩壊のようなつるべ落としの急落になっていないが、投資家も中国経済の未来に明るい展望を持っていないことを示している。

 スターリニスト中国の人口は、昨年22年に「大躍進政策」の災禍による飢餓で人口減に見舞われた1961年以来61年ぶりとなった。大躍進政策が中止され、推進した毛沢東が事実上失脚した後、中国人口はまた激しく増え、共産党は国民に「一人っ子政策」を強制するしかなかった。
 

日本の20年前の後追い​

 そして今、スターリニスト中国は構造的な人口減少社会に入る。

 日本は2008年に人口減少社会に入った。バブル崩壊後の回復もかなわぬまま、厳しいデフレ経済に入ったのと軌を一にしている。

 スターリニスト中国は、アベノミクスまで続いた日本のような悪性デフレ社会に突入していくことになろう。


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