エチオピアは、人類史で最古級の様々なホミニン化石が、それも骨格を含めて見つかっている国だ。
 

人類化石の他にも石器も​

 この国が、かつて帝政時代、ハイレ=セラシエ皇帝が、アメリカの著名な人類学者クラーク・ハウエルに対し「我が国ではなぜ化石がないのか」と慨嘆したことが、逆に信じられないくらいだ。

 その嘆きに対してクラーク・ハウエルはすかさず、「ございますとも、陛下。探されていないだけです」と返し、エチオピアに入っての調査の許可を得たことは有名な逸話だ(16年2月18日付日記:「エチオピア紀行(14):『我が国になぜ化石がないのか?』、『ございますとも、陛下』の問答が開いた進化人類学発展の門」を参照)。

 エチオピアで真に凄いのは、もちろんホミニン化石もたくさん見つかっているが、石器の出現と進歩も、この国で追えることだ。
 

エチオピアではゴナで​

 最古の石器も、エチオピアで発見されている。僕の訪れる前年に330万年前の石器が隣国ケニアのロメクウィで石器が発見されたという報があったが(15年5月16日付日記:「330万年前頃の『ロメクウィアン文化』か、ケニア、西トゥルカナで人類史で最古の『石器』発見;考古学、進化人類学」を参照)、本当にホミニンが意図的に作った物か異論は残る。

​ アファール渓谷のゴナでは、アシューリアン文化を含む各ホミニン段階の石器が見つかっているが、最古のモードⅠ(オルドワン文化)では、260万年前の石器群が見つかっている(写真=東京大学総合研究博物館で)。

 


 

万能石器のハンドアックスも​

 ここでは、アシューリアン文化のハンドアックスも見つかっている。

 ハンドアックスとは、主としてホモ・エレクトスの出現と共に製作されるようになる石器で、ホモ・エレクトスは、これで何にでも切るのに使った。動物の解体、木の切断などだ。後のホモ・サピエンスが作り出す石刃石器と異なり、用途別にまだ分化していなかった。ハンドアックスの変種のクリーバーという石器と共に、アシューリアン文化の指標石器となる。

​ NME(エチオピア国立博物館)の展示フロアで、そのアシューリアン文化(モードⅡ)のハンドアックスを観た(写真)。

 

 

 どこの遺跡出土のものか、年代はどれくらいか、肝心なことを記録しなかったが、2018年1月に東大総合研究博物館に観に行った資料の類推からおそらく150万年前頃のものかと思われる(18年2月28日付日記:「ニュージーランド出発直前に東大総合研究博物館にホモ・エレクトスの作った人類最古級の石器ハンドアックス展を観に行く」参照)。

 土地柄からゴナ出土のものか、と想像している。


昨年の今日の日記:「武漢肺炎の発生は遅くとも2019年の夏か、スターリニスト中国主張の12月より半年以上も早く;PCR機器の調達急増の示すもの」