ロシア侵略軍は、ウクライナ南部のヘルソン州全域とザポロジエ州の北部を除く約70%を制圧し、制圧地、特にヘルソン州で自国領に編入のための「住民投票」をでっち上げようとしている。
 

GPS誘導で遠距離からでもコイン1個を命中できるハイマース16基​

 「住民投票」が強行されれば、投票の偽造と銃による威嚇で「圧倒的多数」でロシア領への編入が決められてしまうのは、これまでのクリミア半島や東部2州の結果でも明らかで、1度、それが決められてしまうと、適用されるロシア憲法によって「ロシア領土の割譲」が禁止されるから、ウクライナが自国領に取り戻すのは極めて困難になる。

 それを阻止すべくウクライナ防衛軍は、南部2州への攻勢を強めている。

​ 威力を発揮しているのは、アメリカから援助された高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」である(写真)。​

 

 

 

 6月から前線に配備されたハイマースは、全部で16基。GPS誘導ロケット弾を1基につき6発搭載可能で、再装填にも約1分しかかからない。しかも最速時速100キロで移動できるから、ロシア侵略軍が発射航跡から追跡を開始しても、移動し終わっている。命中精度は、数十キロ離れた所からもコイン1個を命中できると言われている。
 

アントニフスキー大橋通行不能化などでヘルソン市が孤立​

​​ この威力が遺憾なく発揮されたのは、ヘルソン州都ヘルソン市の東部郊外のドニエプル川に架かる長さ約1キロのアントニフスキー大橋を通行不能にしたことだ(写真上と中央=アントニフスキー大橋と同橋の砲撃の跡、写真下=同橋近くで破壊された碑)。この他にも3つの橋を攻撃し、通行不能にした。​​

 

 

 

 

 ロシア侵略軍は浮き橋を急造し、補給路確保をめざすが、ヘルソン市は他の占領地から切り離された。

 またドイツがウクライナに供与を約束したゲパルト対空戦車もこのほどウクライナに到着し、ロシアが実効支配を進める東部や南部での反攻を本格化させる。
 

東部2州でも侵略軍の勢い鈍る​

 こうしたウクライナ防衛軍の装備の充実で、ロシア侵略軍の勢いは弱まっている。7月27日には西側通信社が当局者の話として、東部ドンバス地域(ルハンスク、ドネツク両州)でロシアが戦闘の主導権を「決定的に失った」と報じた。ドネツク州全域を今後数カ月で制圧する可能性はいっそう低くなったという。

 ロシア侵略軍は、最近は大した要害もない小さな村を占領するにも時間がかかっており、ほとんど前進は見られないという。

 時間をかればかけるほど、ロシア侵略軍は補給不足にも直面する。占領地の維持も難しくなるのが予測される。

 6月にもと予測されたウクライナ防衛軍の反撃は、1カ月以上遅れたが、8月には本格攻勢に至ることだろう。


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