​ 謎の人類の第3の化石、しかも南アジアで最初のデニーソヴァ人化石が、このほどラオス北部の洞窟(写真)から見つかった。イリノイ大学のローラ・シャックルフォードらの国際的研究チームが『ネイチャー・コミュニケーション』5月17日号で報告した。​

 

 

年代は16.4~13.1万年前​

​ 見つかったのはヒトの大臼歯で(写真)、巨大だが、歯根が未発達なことから子どものものと考えられた。しかもY染色体と関係する特定のペプチドをエナメル質に欠いていたことから、女性と分かった。​

 

 

 少女の大臼歯は、洞窟のジャイアントバク、シカ、イノシシ、古代ゾウなどの動物骨集積場所に混じっていた。ヤマアラシが骨を囓るために持ち込んだものと見られ、ヒトの他の骨は見つかっていない。

 骨の年代は、16.4~13.1万年前と推定された。

 

チベットのデニーソヴァ人下顎骨の大臼歯と酷似が決め手​

 この年代となるとホモ・エレクトスが考えられるが、歯の形はもっと複雑で、むしろネアンデルタール人の歯と似ていた。

​ そこで思い出されたのは、1980年にチベット高原の白石崖溶洞で発見され、2019年に発表されたデニーソヴァ人下顎骨である(写真=19年5月5日付日記:「チベットで初めてデニーソヴァ人の存在を確認、シベリア外では初めて、1980年発見の右下顎骨破片」を参照)。見つかった少女の大臼歯は、この歯とそっくりだった。

 

 チームは、アジアで3例目のデニーソヴァ人化石と結論づけた。

 

DNAの推定を化石で裏付け​

 ちなみにデニーソヴァ人が南アジア周辺にも分布していたらしいことは、太平洋諸島からオーストラリア先住民までの現代人DNAにデニーソヴァ人遺伝子がほんのわずかに含まれていることから推定されていた。

 少女の大臼歯の発見は、化石からそのことを裏付けた。

 熱帯は骨の保存に向いていないので、次々と類例が見つかる期待は乏しいが、10数万年前の南アジアには、ホモ・エレクトスの他にデニーソヴァ人も分布していたことがはっきりした。


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