物事がうまくいかない時は、仲間割れが起こるのが世の常だ。
ロシアの「裸の王様」プーチンの取り巻きの中にも、その動きが見える。
ロシアの秘密警察・対外諜報機関FSB(ロシア連邦保安庁)の対外諜報部門幹部2人が自宅軟禁になっているという
秘密警察内にも「勝利なく敗北のみ」の機密文書漏洩
ロシアの独立系メディアの伝えたところによると、同部門の第5局は侵攻に先立ち、プーチンにウクライナの政治状況を報告する任務にあったが、プーチンを怒らせることを恐れ、聞き心地のいいことだけを報告していたようで、プーチンは、侵略軍が首都キエフに到達もしておらず、自軍の被害だけが大きくなっていることに腹を立てたためという。
さらにイギリス高級紙「タイムズ」の7日の報道によると、FSBの「内部告発」とされる文書がインターネット上に流出し、真偽不明ながらウクライナ侵略について「勝利の選択肢はなく、敗北のみだ」と記していたという。「前世紀初め(の日露戦争の敗北)を100%繰り返している」ともしているとか。
3週間のロシア侵略軍の死者は7000人か
実際、2月24日の侵略開始以来3週間ほどで、ロシア侵略軍は夥しい戦死者を出している模様だ。
米紙「ニューヨークタイムズ」が16日報じたところによると、「アメリカの情報当局は、約3週間のロシア兵の死者数を約7000人と推定している」。メディア報道、ウクライナとロシア双方の推計、攻撃を受けた装甲車の映像、衛星写真の分析などを総合したもので、保守的な推計だという。ロシア侵略軍の死者数は1万3500人とするウクライナの主張は過大だとしても、とうていロシアの発表する自軍死者498人で済むわけはない。その程度の軽微の被害なら、とっくに首都キエフやハリコフを完全に陥落させているだろう。それどこか侵略軍はほとんど進軍できていない。
ウクライナ軍が持つ携帯式の対戦車ミサイル「ジャベリン」(写真)、対空ミサイル「スティンガー」が威力を発揮しているのだ。
侵略軍の将官も戦死者相次ぐ
侵略軍は、将官級の死者も多い。15日には、第150機動ライフル師団のオレーグ・ミチャエフ少将(写真)がマリウポリ近郊で殺害されたという。
事実だとすると、これまで戦死が伝えられた将官は、ミチャエフ少将のほか、第29合同軍のアンドレイ・コレスニコフ少将、第41合同軍のヴィタリー・ゲラシーモフ少将、同軍のアンドレイ・スホベツキー少将の4人がいる。
これは、ウクライナ侵略を指揮しているロシア軍の将官約20人のうち、5分の1が戦死したことになる。ロシアにとって、大きな損耗である。
前線に出ることの少ない将官がこれほど殺害されているのは、IT大国のウクライナが将校たちの携帯電話や無線を盗聴し、将官の居場所を正確に特定しているからだ。
劣勢隠すために残虐さ募らす
これほど苦戦し、政権内部で軋轢も出ていることから、ロシア侵略軍はそろそろ停戦に本腰を入れだした可能性がある。ウクライナ代表団との交渉で、停戦の話がチラホラ出ているのは、侵略軍の損耗が無視できないほどに膨らんでいるからだろう。
しかし侵略者の残虐な本質は変わらない。
南部の激戦地マリウポリで16日、市民の大規模避難所として使われていた劇場がロシア侵略軍の空爆を受けて崩壊し「大勢の人々ががれきの下に埋まっている」という(写真=上は空白前、下は空爆で大破した劇場の跡)。
避難所に空爆するなど、スターリニストもどきの蛮行と言うべきで、さすがに優柔なバイデン米大統領も16日、プーチンを初めて「戦争犯罪人」と断罪した。
昨年の今日の日記:「日本一の大株主、日本銀行の保有日本株の功罪」