​ ガソリン価格が上昇している。資源エネルギー庁の10月13日の発表によると、11日時点のレギュラーガソリン価格の全国平均は1リットル=162.1円となり、6週連続の値上がりとなった(写真=セルフ給油所)。1年前は134.10円だったから、1年で28.0円(20.9%)もの急激な値上がりになっている。​

 

 

 地方の交通過疎地で移動をマイカーに頼る人たちには、痛い。そしてこれから冬に向かう北国の人たちは、灯油価格も同じように値上がりする。

 関東に暮らす僕たちも、間もなく電気料金も2割近く値上がりする(10月13日付日記:「武漢肺炎小康の今、エネルギー安保に目を向けよ! 原油高・円安に見舞われる日本の危うさ」を参照)。
 

この50年間の世界のエネルギー使用量は3倍​

 天然ガスのヨーロッパ市場での価格が急騰していることは上記ブログでも述べたが、原油も騰勢著しい。ニューヨーク先物市場で、先週には1バレル=82ドルを付けた。

 化石燃料は、ずいぶん悪玉にされ、新規投資が途絶えたどころか、一部に投資資金の引き揚げも起こっている。

 代わって再生可能エネルギーが大もてだが、それに本質的な限界があるのはあまり知られていない。

 今、世界では50年前の3倍ものエネルギー使っているが、このままいけばどうなるか。

 例えばあるエネルギー経済学者の試算によると、蓄電と送電の問題が解決されれば(今なお未解決だ)、世界の土地の0.1%に太陽光パネルを敷き詰めることで、全世界のエネルギー需要を満たせるという。それがそう行っていないのは、現状が示すとおり。


3世紀後には地球全土に太陽光パネルを敷き詰めても足りなくなる​

 さて今のようにエネルギー使用量が年間2.4%のペースで増えていけば、どうなるか。300年後には、世界中のすべての陸地の隅から隅までの敷地が必要なのだという。むろん農地や住宅地、工業用地も、すべてに太陽光パネルを敷き詰める必要がある。

 300年後という非現実的未来の話だが、再生可能エネルギーも決して無限ではない、ということなのだ。

 だからこそ、再生可能エネルギー一本槍ではなく、エネルギーミックス政策が必要なのだ。それには、原発も適度に組み入れる必要があるし、化石燃料もむろん必要だ。化石燃料利用に際しては、二酸化炭素除去技術を組み合わせる必要がある。


途上国はこれからもしばらくはエネルギー需要増​

 ただ上記の試算には、不透明要因も多い。

 例えば現在、開発途上国での人口増がなお続いているが、途上国もいずれは現在の先進国並みに人口減少社会になる。この時にも、上記の試算のようにエネルギー需要が増え続けるかどうか分からない。ただし人口増は止まっても、生活水準向上のためにエネルギー需要は増え続ける可能性が高い。

 さらに資源供給の制約のために、天然ガス・石油も供給減少に陥る可能性もある。太陽光パネルでも、銅や貴金属、レアアースの供給制約で、ある程度以上は増やせないかもしれない。
 

このまま化石資源の開発に手を抜いていいのか、熟考の時​

 だからこそ資源探査の手を抜いてはならない。

 今、世界はESG投資の圧力で、主として石炭鉱山の廃鉱圧力が高まり、石油の油田にも及ぼうとしている(写真)。

 

 

 愚かなことだと思う。現在のような資源価格の騰勢は、明らかに供給先細りを先取りした動きだ。ヨーロッパでは、天然ガスの暴騰で、天然ガス主要供給源であるロシアの存在感が高まっている。

​ ロシアは、今年のノーベル平和賞の受賞者の1人に選ばれたドミトリー・ムラトフ氏(写真)は、ロシアのプーチン政権に批判的論調を取る唯一のメディア『ノーヴァヤ・ガゼータ』の創立者・編集長だ。そのロシア・プーチン政権の勢いを助けるような化石燃料資源開発から手を引こうとするのは、エネルギー経済的にも政治的にも非常にまずいのではなかろうか。​

 

 

 原油価格上昇には、円=ドル相場も連動する。円安・原油高は、我々の家計をますます苦しくするのは間違いない。

 総選挙でも、与党からは原発再稼働・リプレイスを含めたエネルギーミックス政策の重要性が語られることを望む。


昨年の今日の日記:「乱気流に巻き込まれ、視界も不透明:苦境の日の丸航空業界に深く同情」​