マドゥラ独裁下の南米ベネズエラのハイパーインフレが止まらない。

 同国中央銀行は5日、ハイパーインフレに対応するため、通貨の単位を100万分の1に切り下げるデノミネーション(デノミ)を10月1日に実施する、と発表した。


2008年以来、3回目のデノミ、どうにもインフレは止まらない​

 現行の通貨「ボリバル・ソベラノ(Bs)」からゼロを6つ減らした新通貨を発行する。

 おそらく新通貨と交換の際に金額に制限を定め、市中から余った通貨を排除しようとするのだろうが、それもたぶん一時しのぎ策に過ぎない。

 というのは、国内経済運営に失敗し、アメリカとの摩擦も強まった2008年と18年の過去2回、デノミが行われているが、ハイパーインフレは一向に収まらないからだ。

 今回のデノミと合わせると、通貨の単位は08年の100兆分の1となる。

 この天文学的インフレは、第1次世界大戦後のドイツ、ムガベ政権時代のジンバブエでもあった。今は、独裁マドゥラが強権支配するベネズエラである。

 過去のドイツとジンバブエの例もそうだが、ハイパーインフレは、国内で物が生産されなくなり、外貨不足で輸入物資も入ってこなくなる極端な物不足で起こる。
 

第1次世界大戦後ドイツはレンテンマルク、ジンバブエは米ドル本位制に​

 第1次世界大戦後のドイツは戦争で生産基盤が破壊され(植民地を失い、主要工業地帯のルール地方を占領された)、政治も混乱し、労働者の多発するストライキをなだめるための野放図な賃上げによる需要の高まりの中で起こった。

 ジンバブエはムガベ政権の無謀な白人農地の没収で、やはり生産基盤が破壊され、また労働者の歓心を買うための生産性を越えた賃上げを実施して起こった。

 ドイツは、土地の価値を裏付けにした「レンテンマルク」を発行して通貨価値を高め、過剰な需要を抑えてハイパーインフレを収束させた。

​ ジンバブエは、今も大きなインフレ率に悩むが、ムガベ政権時代ほどではない。何しろムガベ時代には、100兆ジンバブエドル紙幣(写真)も発行されたのだ。​

 

 

​ 僕も、8年前に南部アフリカに行き、その途中、ジンバブエ国内、ヴィクトリア・フォールズ市内に宿泊、その際の街歩きで物売りから超高額ジンバブエドル紙幣を記念品として購入した(写真=その時に買った最高額500億ジンバブエドル紙幣)。​

 

 

 この時も、物の支払いはすべてアメリカドルだった。ジンバブエも通貨主権を放棄し、アメリカドルを国内流通させて、何とか頭を抑えられた。


無責任な経済運営収まらず​

 さて、ベネズエラである。

 前記のように、ハイパーインフレはもう10数年も続いている。それでも、収束の気配は見えない。第1次世界大戦後のドイツやムガベ政権時代のジンバブエと、同じ構造が続いているからだ。

 ベネズエラ国内に、ドルで買える店以外には商品はない。かつて石油成金時代、国内産業振興に注力して生産基盤を整えることを怠り、ほとんどすべての日用品をアメリカなどからの輸入に頼っていたので、外貨が無くなって輸入が途絶したからだ。

 しかし2013年までこの国を独裁的に支配したウゴ・チャベスは、政権基盤を固めるため貧困層の歓心を買おうと、莫大なバラマキを行い、物不足に陥った。

 チャベスの跡を継いだマドゥラも、ハイパーインフレの不満を抑えようと強権姿勢を強め、国内は内乱に近い状態になるほど混乱した。

 アメリカとは、前トランプ政権時代、一触即発の状態になった。今は強力な経済制裁下にある。

 そのため、周辺国に数百万人もの国民が逃亡した。


ドイツ、ジンバブエよりも筋が悪い​

 武漢肺炎パンデミックもあって、生産活動もマヒ状態だ。スターリニスト中国から寄せられた全く効かないエセワクチンで、何とかもたせている。

​​ この状況は、明らかにドイツ、ジンバブエより悪い(下の写真の上=バスに乗るにもたくさんの札束が必要。下の写真の下=飲み水が無く、川から水を汲む人たち)。​​

 

 

 

 したがってハイパーインフレは、これからも続く。マドゥラが退陣しない限り、4回目のデノミもいずれ避けられないだろう。


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