実はほとんど報道されなかったが、この6月1日に直径約300メートルと推定される地球近傍小惑星「2021KT1」が、地球に最接近していた。
 2021KT1は、事前に存在が把握され、軌道も計算されていた。
 さらにさほど話題にならなかったのは、地球への接近が約720万キロと離れていたことがある。これは、月までの距離の約19倍もあった。

​​
かすめ去ってから天文学者は気がついた​
 しかし、実は危ないところだったと思われる地球近傍小惑星の最接近が、1年前の2020年6月5日にあった。超小型小惑星が、月までの距離の80%に当たる約30万キロの所にまで地球に最接近し、飛び去っていたことが分かった(写真=地球に接近する小惑星想像図)。

 

 


 憂うべくは、このような地球近傍小惑星には、監視する天文学者たちも接近に気づかず、超接近していたことは、この小惑星が地球から過ぎ去ってから2日後だったということだ。
 この地球近傍小惑星は、「2020LD」と名付けられたが、直径は約122メートル程度だった。むろん660万年前の白亜紀末にユカタン沖に衝突し、恐竜の時代を事実上終わらせた小惑星の推定直径約10キロよりは、ずっと小さい。
 しかしそれでも、もし地球に衝突すれば、半径80キロの範囲内に猛烈な爆風と焦熱をもたらし、大都市を直撃すれば、壊滅的被害が出た、と推定される(写真=アメリカ、アリゾナ州にあるバリンジャー隕石孔。人類がまだ新大陸に進出していなかった5万年前頃に、30~50メートルの超小型小惑星が衝突した跡。僕は、以前、ここを訪れ、その大きさに息を飲んだ記憶がある)。​​

 


 

7.2万キロまで近づいた130メートルの小惑星​
 2020LDよりもっと危険な小惑星が、その1年前にあった。
 2019年7月25日に地球に最接近した「2019OK」だ。大きさは、推定130メートルと2020LDと同程度。しかし接近度は、さらに大きく、実に月までの距離の20%ほど、約7.2万キロまで近づいた。これは、広い太陽系から見れば、「かすめた」と言っていいほどの超最接近だった。
 2019OKも、大都市近くに衝突すれば、1つの都市圏が消滅するほどの巨大被害をもたらした、と見られる。
 こうした地球近傍小惑星は、主なものは軌道も特定され、接近度もある程度分かっている。しかし2020LDや2019OKのように、天文学者たちが全く気づかない地球近傍小惑星は無数にあると考えられる。小さいだけに、発見ができず、気がついた時は、手遅れという事態は十分あり得る。
 

1年に1度は小惑星が急接近か​
 以上のように見てくると、1年に1個程度のニアミスする地球近傍小惑星があることになる。
 2021KT1のように720万キロも離れて飛び去ってくれるならどうということはないが、2019OKのように数万キロ程度となると、そのうち直撃する危険のある地球近傍小惑星も現れるかもしれない。
 またある程度離れて通過すると予想される地球近傍小惑星も、太陽や月、地球そのものの引力の影響を受けて軌道を大きく変えるものもあり得る。
 今は、そうした物が来ないように祈るしかない、という実はお寒い状況なのである。


 所用で、数日間、休載します。
 

昨年の今日の日記:「はしか(麻疹)出現は2500年前、ウシのウイルスから分岐して人類に感染」