​ アリババ・グループ(写真=杭州市のアリババ・グループ本社)がスターリニスト中国当局から巨額罰金をくらった。​

 

 

3000億円もの巨額罰金​
 アリババは10日、国家市場監督管理総局(SAMR)から独占禁止法に違反したとして、182億2800万元(邦貨換算で約3000億円)もの巨額罰金を科された。
 対象となったのは、アリババの2019年のスターリニスト中国国内の売上高約4560億元の4%分。科された罰金額は20年3月期の純利益1492億元の約12%に相当する。
 3000億円もの巨額罰金でも、純利益の10%ちょっと、というのは、さすが巨大会社のアリババだけのことはある。日本ならトヨタやソフトバンクグループなど一部企業を除けば、年間純利益の大半が吹き飛ぶほど大きい。
 

当局による締め付けは増すばかり​
 それにしても、中国共産党のアリババに対する締め付けは厳しさを増す一方だ。
 昨年11月、スマホ決済サービス「支付宝(アリペイ)」などを手がける傘下のアント・グループが「習近平の鶴の一声」で香港と上海への上場延期を余儀なくされ(20年12月26日付日記:「上場延期となったスターリニスト中国のアント・グループと親会社アリババの強大な力に習近平と中国共産党が強い警戒」、及び20年11月7日付日記:「金融の巨人アリペイのアント・グループ、上海・香港株式市場の史上最大のIPOが上場2日前に急遽延期の驚き」を参照)、それが最初の一撃となった。
 

スターリニスト中国に警戒心を抱かせるほどに巨大化​
 巨額罰金の処分理由は、ネット通販事業の「支配的地位の乱用」だ。確かにアリババほどの巨大ネット通販企業になれば、どこかをつつけば「支配的地位の乱用」の事案は必ず出てくるだろう。
 しかしその発端が、アント・グループ上場延期の直前の昨年10月、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー=写真)が国の規制制度を批判したことにあるのは衆目の一致するところだ。以来、アリババは当局、すなわち中国共産党の厳しい監視の対象になっている。馬雲も、ほとんど公衆の前に姿を見せず、事実上、軟禁に近い状態にあると思われる。

 


 元は、そうではなかった。それどころか、創業からしばらくはスターリニスト中国国家の大きな支援を受けてきた。当局は、アリババの成長を後押しするため、ライバルになり得るアメリカのフェイスブックやグーグルのサービスを、2009年から10年に一斉に中国市場から排除した。
 ところが、アリババはスターリニスト中国が気を許せないほど巨大化するようになった。それを当局に気づかせたのが、10月の馬雲の規制制度批判だった。​
 

これからもアリババへの抑圧は続く​
 アリババは、アントを通じて国有銀行が仕切る金融分野にも進出してきた。放っておけば国有銀行は、アントの、ひいてはアリババの「下請け」に転落しかねない。
 国家経済を支配する国有銀行は、中国共産党支配の要である。ここを浸食されていけば、やがては習近平の権威をも脅かせることになる。
 アリババに対する抑圧は、これからも和らぐことなく、少しずつ強められていくだろう。それは、馬雲が持ち株をすべて共産党に渡して、アリババが国有企業になるまで続くだろう。
 それを予見するかのように、当面の業績絶好調と裏腹に、香港市場のアリババの株価は、直近高値から3割も下げている。投資家にとって、アリババは危なくてとうてい買えない株、となっているのだ。

 

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