スターリニスト中国発で、世界に襲いかかった武漢肺炎。その激震は、300年以上前の小氷期以来だった、イギリスでは。
 

300年以上前、テムズ川が一冬、凍結、実質GDPは13.4%も落ち込む​
 イギリス統計局が12日発表した2020年の実質GDP成長率速報値は、前年比9.9%の落ち込みで、減少幅はスペイン風邪襲来や2つの大戦よりも大きかった。1709年以来、実に311年ぶりの落ち込み、という。
 さすが世界最初の産業革命を成し遂げた国だけあり、イングランド銀行は過去の統計を持っていて、1709年は小氷期による大寒波で経済混乱し、13.4%も実質GDPは前年より落ち込んだ。それ以来、という。
 この年は小氷期の盛期にあったが、テムズ川は一冬、完全に凍結した(=凍結したロンドン)。また何年も続いた寒い夏のおかげで作物も獲れず、イギリスはじめヨーロッパは深刻な飢饉に襲われた。​

 


 

​​フランス革命の引き金にも​
 小氷期の盛期にはアイスランドでは港が凍結し、グリーンランドに植民していたヴァイキングとの連絡が途絶え、折から慣例適応して西進してきたチューレ文化(先史エスキモー文化)人の圧迫もあり、グリーンランドに入植していたヴァイキング社会は全滅した(グラフ)。

 


 日本でもこの頃、大飢饉に頻繁に襲われ、享保の大飢饉はこの頃である。
 小氷期の間、多くのヨーロッパ諸国は大冷害による凶作で飢饉に見舞われている。
 フランス革命も、10数年も続く凶作で農民らも食うや食わずの中で起こった。
 それは、前記のように西半球や極東など全地球的に影響を及ぼした。この頃の様子は、農民生活を描いたピーター・ブリューゲルの絵(写真)にも氷雪で埋まった田園という形で多く描かれた。​

 


 

地球温暖化で小氷期の再来の恐れ遠のく​
 小氷期の原因の1つとして考えられるものに太陽活動の減弱がある。小氷期の最も厳しかったのは、中頃の1645年から1715年にかけてで、この頃、太陽の黒点の活動が著しく低下したマウンダー極小期に当たるからだ。
 また世界的に火山活動も活発だった。火山噴火で巻き上げられた火山灰は大気圏上層に達し、地球全体を覆うように広がり、これが何度も続いて地球を冷やしたともいわれる。
 小氷期は、やっと19世紀半ばに終わる。それからは、産業革命の活発化で温暖化効果ガスが大気に溜まり続け、今日まで続く温暖化となる。もし地球温暖化の利点を1つだけ挙げれば(それしか考えつかないが)、小氷期の再来の恐れが遠のいたということだろう。
 イギリス人も、武漢肺炎による経済ダメージが、小氷期盛期以来となると、あらためて傷手の大きさに驚くに違いない。

昨年の今日の日記:「陸棲哺乳類が泳ぐ――水泳が得意な陸の動物たち」