昨日15日、日経平均株価が終値でついに3万円を回復した。引けは、前日比564.08円高の3万0084.15円。3万円台回復は、1990年8月以来、実に30年半ぶりのことである。
 

​​個人投資家の落ちる怖ろしい罠
 前年12月29日、日経平均株価は3万8915円の史上最高値をつけ(写真)、その年の取引を終えた。翌年早々にも初の4万円台載せを誰もが疑わなかった。

 


 ところが1990年の新しい年を迎えると、株価はつるべ落としのように劇下げとなる。実に1990年の1年間で1万5000円もの大きな下げとなった(チャート図)。

 


 この過程で、おそらく平成バブルに浮かれた人たちは、何万人もが、なけなしの資産を失っただろう。現物の株を持っているだけなら、下げにじっと我慢すればいい。株を担保に信用取引をしていた個人投資家は、毎日のように証券会社担当者から来る担保不足からの追い証の催促に疲れ果て、すべてを投げ売ってマーケットから退場した。​​
 

絶対に投資してはならない大きな出費を控えた人​
 株取引とは、資産運用以上に資産を喪失する恐怖を背にしたトレーディングだ。だから株取引を始めようとする人に必ず言われる忠告は、「余裕資金で」ということだ。信用取引は、その対極にある。
 たとえば子どもの入学金や授業料、結婚資金など大きな出費を控えている人が、その間にちょっと運用を、と考えて始めるべきでは、絶対にない。必要な出費を控えていて、思惑が外れれば、損失をしてでも泣く泣く手じまいをしなければならないからだ。
 

NTT株、この苦渋の思い出​
 思えば僕もよくぞ生き残ってこられた、と時々、思う。
 この間、ITバブル崩壊、リーマンショック、そして昨年3月の武漢肺炎ショックなど、何度となく苦しい局面の渦中に巻き込まれた。巨額の含み損の重圧き苦しいが、それでも耐え忍んで、株取引から退出することはしなかった。
 そうした中で今も苦渋の中に思い出すのは、NTT株(写真=設立時のNTT株券。今は電子化されているので、このような紙の株券はない)の暴落であった。買ったはいいが、日々、持っているだけで減価していく。

 


 時たま、思い出したように反発するが、買い値まで、と見ているうちに、また下げ局面に戻る。そしてさらに直近安値も割っていくのだ。
 その繰り返しだった。​
 

巨額利益を損失引き当てにしてNTT株損切りを断行​
 ついにNTT株呪縛から逃れたのは、持っていた別の株が思いがけなくも5倍近くも暴騰し、それを売って大きなキャピタルゲインを得た時だ。その利益をそっくり損失に当てるつもりで、NTT株全株の損切りを行った。
 せっかくの巨額利益(高級車1台が買える金額だった)をそれでチャラにしたのは残念だったが、長年の含み損の重苦しさから逃れられたその時のせいせいした気分、スカッとした気分は、忘れられず、今も時々、思い出す。
 以来、NTT株にはいっさい触らないことに決めている。
 

しかし老後資金準備に株式投資は不可欠​
 生き残って来られたのは、やはり「余裕資金で」という教えを忠実に守ったことだった。生活費まで注ぎ込んでいたら、とうに破綻していた。
 極超低金利下の今、老後資金準備には、株式投資(REIT投資、投資信託の積み立てでも構わない)は欠かせない。しかしそれも、余裕資金をもって、である。

 

昨年の今日の日記:「早すぎた尊皇思想家、高山彦九郎と天明の大飢饉(前編):東北旅行で見た、聞いた惨状をルポ」