​​ ニューヨーク株式市場(写真=ニューヨーク証券取引所=NYSE)は、米中貿易戦争や武漢肺炎の拡大などもどこ吹く風の快調さで、ダウ3万ドルを目前にする。

 


 それに比べ、わが日経平均はいまだに2万3000円台をウロウロしている(写真=東京証券取引所)。



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借金してまで配当・自社株買い​
 彼我の差は、何なのか。一般に説明されているのは、ダウの構成銘柄にアップルやマイクロソフトなどIT系が多いのに対し、日本の日経225銘柄には、旬を過ぎた日本製鉄や三菱重工、川崎汽船など旧来型の不振銘柄が主流を占めているから、とされる。
 確かに、そのとおりなのだろうが、先日の日経新聞で、ニューヨーク株式市場に上場されている大企業に、自社株買いが盛んだという記事を見て、これも一因なのでは、と思い至った。
 同紙記事によると、社債などで調達した「借金」で、配当を出し、さらに自社株買いをする株主還元がすさまじく、そのため債務超過になっている企業もある、という。
 

超有名企業も債務超過の怪​
 そのリストを見て、目を見開いた。例えばタバコのフィリップモリス、世界2大航空機メーカーのボーイング、アメリカ人の主食に近いハンバーガーのマクドナルド、ケンタッキーフライドチキンを展開するヤムブランズ、そしてあの「スタバ」ことスターバックスもある。
 日本でも誰でも知る有名な会社、これらはすべて債務超過、である。債務超過とは、資産よりも借金が多い企業で、日本なら倒産寸前企業である。債務超過企業は、そこへの融資は不良債権に分類されるから銀行は、運転資金も貸さない。すると資金ショートして倒産、となる。
 また上場企業の場合は、1年以内に債務超過を解消できないと上場廃止になる。
 

市場の流通株を吸い上げる自社株買いが株価を押し上げる​
 ところがアメリカでは、フリーキャッシュフロー(純現金収支)の黒字が続く見通しなら、借金返済を求められることはない。だから例えば債務超過のマクドナルドも、格付け会社は投資適格のトリプルB格を与えている。
 投資家にすれば、フリーキャッシュフローが黒字なら倒産することもないし、多額の配当もしてくれるので、安心して株を買う。その上に株主還元として借金して自社株買いもする。自社株買いされると、市場に出回る株が減る。それだけ株の価値が上がり(PER=1株利益=が割安となる)、値上がりしやすくなる。したがってさらに株価が上がる。
 そういうことらしい。
 

ニューヨーク株高は需給関係だけ?​
 逆に言うと、ニューヨーク株高は、需給関係によるだけで、ファンダメンタルズを反映していない可能性がある。実際に、株価の割高さ・割安さを測る万国共通の尺度であるPERはニューヨーク株の平均が18倍台、日本株は14倍台と、ニューヨークは明らかに割高だ。
 しかしそれでも日本株の低迷を尻目に、ニューヨーク株式市場は堅調に推移し、近々、3万ドル台に載せるのは確実視されている。この勢いは、11月の大統領選でトランプ大統領が再選されれば、さらに続くだろう。
 

日経平均は最高値の6がけ、ニューヨークは11倍​
 最後に信じられない話。日本株がピークをつけたのは、今から30年ほど前の1989年12月29日の大納会の終値3万8915円である。つまり30年たっても、当時の高値の6割程度に甘んじている。
 では、その日のニューヨーク株価は? 調べると2753.2ドル、今の11分の1程度である。
 つまり為替差を考慮に入れなければ、当時の日経平均連動の投資信託を買った人は半値程度に泣く一方、ダウの投信購入者は11倍となっているのだ。
 やはりアメリカは、強い!

 

昨年の今日の日記:ネパール旅行のため休載