アメリカは7日、スターリニスト中国の監視カメラ機器メーカーとそのデータを基に顔認識技術を提供する会社など28社・団体への輸出禁止措置をとることを発表した。アメリカ商務省は9日付で、これらを輸出規制対象であるエンティティー・リスト(EL)に載せる。
 

監視カメラ世界首位のハイクビジョンや顔認証技術のIT企業など​
 輸出禁止対象になるのは、全国で2億台超の監視カメラメーカーで、生産高世界1位の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)、同2位の浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)、顔認証技術の商湯科技(センスタイム)、曠視科技(メグビー)など8企業、そしてアメリカが少数民族を弾圧していると非難するウイグル自治区政府の公安部門など20機関だ。
 ハイクビジョンとダーファはその精密な監視カメラで、センスタイムとメグビーは監視カメラで取得した顔から個人を特定する世界一の技術を持つ(写真)。

 

 

 

 

 


 香港で、デモをする若者が覆面をし、時には街頭の監視カメラを打ち壊すのは、こうしたカメラで自分が特定されることを防ぐためだ。顔認証システムは、たとえ顔が斜めになったり、一部を隠したりしても、ほぼ個人を特定できる。​
 

国内だけでなく途上国にも輸出​
 スターリニスト中国の街頭の監視カメラでは、実際に交差点を信号無視して渡った人物でも直ちに特定され、傍らの巨大モニターに個人名を挙げて警告される。
 6.4市民革命(いわゆる天安門事件)以後、徹底的に弾圧され、口の端に載せることも厳禁のもと、ヒツジのように温和しくされている北京や上海の市民に対しては、政治的に使われることは少ないだろうが、東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)では猛威をふるい、ペンス副大統領が1年前に非難したように「中国共産党は100万人以上のウイグル族を含むイスラム教徒を強制収容所に投獄している」。ムスリムを摘発するのも、収容所で24時間監視するのも、そうした恥ずべき企業なのだ。
 しかもスターリニスト中国は、この国民監視技術を独裁国の多い途上国に輸出している。例えばジンバブエでは、入国審査にスターリニスト中国の技術を導入している。​
 

逮捕されれば凄惨な拷問​
 弾圧の一端は、昨年、アメリカ議会でウイグル人女性の口から証言された。彼女、ミフリグル・トゥルソンさんは、結婚してエジプトで暮らしていたが、3人の子どもを連れて里帰りしたウルムチの空港でいきなり当局に逮捕された。
 獄中で待っていたのは、電気棒を使っての拷問、狭いため2時間交替で眠るしかなかった不潔な雑居房、そして自白剤と思われる薬物投与だった。引き離された子どもの1人は、謎の死を遂げた。
 薬物投与は、農民や政治犯の弁護を買って出ている人権派弁護士に対しても多用され、廃人のようにされている(17年7月1日付日記:「劉暁波氏だけでなく人権派弁護士たちをも廃人に追い込みその家族の人権をも侵害する共産党一党独裁中国の非道の数々」を参照)。
 

香港、台湾が恐怖に震える理由​
 香港の若者たちが反スターリニスト中国デモに立ち上がり、台湾では20年の総統選で反スターリニスト中国の現職総統の蔡英文氏が親スターリニスト中国の国民党候補の韓国瑜を大きくリードしているのは、こうした恐ろしい独裁国家に飲みこまれたくないという真剣な思いがある。
 だからこそ、民主主義の守護者であるアメリカに期待が高まるのだ。
 ところがそのアメリカを統べるのが、人権に鈍感で、シリアで自分の利益になれば長年の盟友だったシリア民主軍(SDF)をも簡単に見捨てる、来年の大統領選挙しかない頭の中にないトランプ大統領なのである。早く弾劾されて、ペンス副大統領に代わって欲しい。
 

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・19年7月3日付日記:「香港3度の大規模デモ、民主体制下でも顔を隠さないと危うい現状はまさに一国二制度維持の瀬戸際」
・19年6月2日付日記:「『天安門』30周年、市民を隅々までスパイする監視カメラで共産党一党独裁は安泰か」
・19年5月26日付日記:「ファーウェイに続いて牢獄国家の監視役、監視カメラの世界シェア1位の『杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)』も禁輸へ」
・18年10月27日付日記:「米中新冷戦の幕開けを告げるペンス副大統領の厳しいスターリニスト中国全面批判」

昨年の今日の日記:「樺太紀行(19);チェーホフ山(鈴谷岳)登山⑥:標高790メートルの稜線に到達、そこでランチ」
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