サハリン州郷土博物館の話が出たついでに、さらに自然史展示の話を進める。
 剥製展示の動物で、最初に目を引いたのは、1階の動物展示場の入口に、シカのような大型動物が立って僕たちを歓迎してくれた(写真)。

 

 

エゾシカより巨大なトナカイ
 一瞬、エゾシカかな、と思ったが(何しろ説明はすべてロシア語なので、その時は分からなかった)、どうも違う。帰国して、もう1度、写真を見直し、トナカイだと分かった。
 今の日本人は、日本統治時代の南樺太に先住民族がいたことを知らないだろう。
 まず最大の先住民は、樺太アイヌである。ずっと人口を減らしてウィルタ(樺太アイヌからは「オロッコ」と呼ばれたツングース系民族)、そしてニヴフ(以前は「ギリヤーク」と呼ばれた)である。
 このうちウィルタ(上の写真の上)とニヴフ(上の写真の下)は、南樺太の北部以北に狩猟採集・牧畜生活をしていた。

 

 

 

飼育されていたトナカイが野生化
 ウィルタで特徴的なのは、生業としてトナカイの牧畜を営んでいたことだ。南樺太北部から北樺太にかけて、広大なツンドラ湿原が広がる。そこでコケを食べるトナカイを飼育していたのである。
 ウィルタは、元来は沿海州、シベリアに住んでいた。彼らは、トナカイを連れて狭いタタール海峡(間宮海峡)を渡って、いつ頃かサハリンに渡来してきた。
 そのウィルタも、日本統治時代とその後のソ連支配下で、定住生活を営むようになり、トナカイ飼育をやめた。また群れを離れて野生化したトナカイもいた。
 だからサハリン島にも、トナカイはいるのだ。
 残念ながらユジノサハリンスク近郊にはいない。だから今回、トナカイを観る機会は無かった。

 

展示があるも観られず
 なお2階には、自然民族の展示もあった。
 ところがここは、現地ガイドのヴァレンチンさんもほとんどスルーした。日本人観光客は関心を示さないだろうという見立てだ。
 また何度も繰り返すが、展示の説明板はすべてロシア語オンリーだ。ガイドの説明無しでは、全く分からない。
 それに滞在時間があまりにも短すぎた。帰ります、というTDの無情な声。
 僕は写真を撮ることもかなわず、後ろ髪を引かれる思いで、フロアを後にした。

 

その名もオオカミウオ、獰猛な顔つき
 もう1つ、オホーツク海に棲む怪魚も展示されていた。その名も、オオカミウオと言って、獰猛な顔つきをしている(写真)。

 

 

 体長は、1メートルほどはある。今も、北海道のオホーツク海沿岸で網にかかり、食べれば美味しい(ただし僕は食べたことはない)。
 写真では観たことはあるが、剥製とはいえ、実物を観るのは初めてだ。なるほどオオカミウオと呼ばれるだけある。歯からも、肉食魚であることが一目瞭然だ。

 

昨年の今日の日記:「イスラエル・ヨルダンの旅(8);巨大な岩の「殿堂」バブ・エル=シーク・トリクリニウムをチラ見だけでパス」