アメリカが国連人権理事会(写真)から脱退した。かねてからトランプ大統領はじめ政権内部から同理事会に不満が表明されていたから、いわば予期されたことである。

 

 

世界多数派の独裁政権、途上国に左右される国連機関
 今回の国連人権理事会からの脱退を、トランプ政権の相変わらずのアメリカ第1主義、反国際協調路線の表れ、とメディアは批判しているが、僕は今回のトランプ政権の行動は支持したい。
 長年、国連と専門機関は、加盟国の8割前後を占める途上国に翻弄されてきた。途上国は、当然ながら貧しく、また欧米風民主主義が根付いていない。国内の一部特権層が政治を握り、独裁的な国家運営を行っている国が大半だ。
 その特権層と結託するスターリニスト中国やロシアが、その国々に影響力を発揮して、思うがままに運営や決議を行う。

 

UNESCOの苦い記憶
 すでに昨年も、途上国の独裁政権とアラブ諸国が実質支配するUNESCOから、反イスラエルの政治偏向が目に余るとして、アメリカとイスラエルが脱退している(17年10月16日付日記:「アメリカとイスラエルがUNESCOの政治的偏向に抗議し脱退決定、日本も場合によっては脱退も」を参照)。
 UNESCOに関しては、日本も苦い記憶がある。スターリニスト中国の画策で、何の根拠も無い「南京大虐殺の記録」と称する文書類が、15年に世界記憶遺産に登録された(15年10月18日付日記:「『南京事件』を世界記憶遺産に登録したUNESCOは中国の操り人形か、日本は分担金の支払いの停止を」を参照)。
 UNESCOは、かように世界独裁政権の支配する場に変容してしまったから、アメリカが脱退するのも当然だった。

 

人権理事会の理事国に反人権国家が名を連ねる「ヘタな冗談」
 今回の国連人権理事会からの脱退も、トランプ政権には腹に据えかねる思いがつのった末である。
 例えばヘタな冗談にも思えるが、国連人権理事会の理事国に、人権抑圧国家が名を連ねていることだ。
 世界最悪の人権抑圧国家のスターリニスト中国を筆頭に、野党・反政府派を逮捕・投獄し、野党多数派の議会を無力化させ、食料を求めるデモ隊を虐殺し、隣国に多数の餓えた国民を難民として追い出している独裁マドゥロ政権のベネズエラ、任期がとっくに切れたにも関わらず野党などの反対を無視して大統領に居座り、それに抗議するデモ隊に残酷な弾圧を加えて40人以上もの死者を出した(16年12月)ほか、隣国と常に軍事紛争を起こしている独裁者カビラの支配するコンゴ民主共和国、である。

 

人権を嘲笑う偽善的で利己的な組織=人権理事会
 こんな野蛮な反民主主義・反人権国家が、国連人権理事会で、例えばイスラエルとパレスチナ住民との衝突を「人権侵害」としてイスラエルを、そしてこれを後押しするアメリカを非難するのである。
 「人権を嘲笑う偽善的で利己的な組織には、もう残らない」と19日、アメリカのヘイリー国連大使とポンペイオ国務長官が共同記者会見で脱退理由を述べて人権理事会を非難したが(写真)、至極もっとも、である。

 

 

民主的な抗議デモの参加者を虐殺する国を非難したか!?
 例えばパレスチナ住民を治安部隊が鎮圧するイスラエルを非難するが、数十人ものデモ隊員死者を出しているベネズエラやコンゴ民主共和国に、同理事会が何か手を打ったのか。何1つ、措置はとられていない。何の法的根拠もなく異論派を逮捕・投獄しているスターリニスト中国に対してはどうなのか?
 国連安保理は、5大国常任理事国が拒否権を持つから、一方的な反イスラエル決議など通らないが、拒否権の無い総会では、しばしばイスラエルとアメリカは非難を浴びせられる。

 

独裁国の言いなりの現状改革が急務
 こうした諸機関は、アメリカが4分の1近い分担金を負担して運営されている。アメリカの脱退は、UNESCOと国連人権理事会には痛手だろうが、まずは独裁国家の言いなりになっている現状を改めることが必要だ。
 でなければ、たとえトランプ政権が終わり民主党政権になっても、アメリカはこの2つに復帰することはないだろう。

 

昨年の今日の日記:イスラエル・ヨルダン旅行のため休載