プーチンが18日の大統領選で、圧倒的多数で通算4選された。大規模不正となりふり構わない投票駆り出しがなされたけれども、ともかくもロシア国民から支持された。

 

プーチン支配の第1期は最も輝いた時代
 プーチンの大統領時代は、2000年~2008年の最初の任期中を第1期とすれば、間のメドヴェージェフ傀儡政権を挟んだ2012年からの第2期と分けることができる。
 第1期は、BRICSと呼ばれた新興経済大国の一翼を担い、年率6~7%の高い経済成長を誇った。この時点でプーチンの統治は、順調な実りをもたらし、ロシアが最も輝いた時代だったと言えるだろう。
 ただ子細に見れば経済の高成長は、原油価格の高騰がもたらしたものに過ぎなかった。だからリーマンショック前後を境にしてその後の原油価格の低迷は、2期目のプーチン支配に何らの正当性も付与するものでもなかった。

 

ブレジネフ時代末期のような「停滞の時代」
 1期目の黄金の時代に、豊富なオイルマネーで、経済構造の改革を断行すべきだったのに怠った。すなわち資源にだけ頼る跛行的経済ではなく、航空・原子力などに偏る工業を改革し、機械や電機、自動車、造船などの発展に注力すべきだったのだ。
 それがなし得なかったツケが、12年からの2期目の支配の低迷期として回った。
 経済成長率はマイナスか、せいぜい1%程度と、1970年代の旧ソ連のブレジネフ時代のような「停滞の時代」に陥っている。経済構造の改革がなされていないので、これからの6年間の任期中も、「停滞の時代」は続くだろう。

 

排外的愛国主義に訴えて支持つなぎ止め
 普通なら経済の不振は、大統領支持率の下落となって表れる。しかしプーチンは、排外的愛国主義に訴えることで、「強いロシア」を演出し、民衆の支持をつなぎ止めた。
 例えば2014年のクリミア併合であり、その後のウクライナへの軍事介入、さらにはシリアへの軍事介入などである。また西側メディアへのサイバー攻撃、フェイクニュースの拡散である。
 最近のイギリスに亡命した元スパイであるセルゲイ・スクリパリ氏と娘の暗殺未遂も、その一環だろう。スクリパリ氏らは、ロシア製化学兵器である「ノビチョク」で攻撃され、ちょうどその場に居合わせて2人を助けようとした警察官もすぐに容態が悪化し、重体となっている。元スパイの暗殺計画の実行は、祖国を裏切ったスパイには死を(СМЕРШ:Смерть шпионам、Death to the spies)、という報復とロシア反体制派への見せしめである。
 さらに今年3月1日の年次教書演説では、新型核兵器の開発や新たなミサイル配備などを示し、露骨にEUとアメリカを恫喝した。

 

バルト3国への軍事介入の危惧
 今後、プーチンがさらに新たな攻勢をかけるとすれば、旧ソ連のバルト3国への軍事介入が予想される。
 国民の支持をつなぎとめるために必要だと判断すれば、今のプーチンならやりかねない。バルト3国は、旧ソ連時代、ロシア人が大量移住し、今もロシア語を話す層が大量に存在する。特にラトビア、エストニアにはロシア系が多い(写真はエストニアの首都タリン旧市街。中央は、ラトビアの首都リガの聖ヤコブ教会、下に1991年のソ連からの独立を求めてバリケード構築で闘い、犠牲になった5人の記念碑が見える。はリトアニアの「十字架の丘」。帝政ロシアと旧ソ連の支配に抵抗した人々の記念碑として無数の十字架が立てられている)。

 

 

 

 

 彼らを扇動し、騒動を起こさせ、ロシア系住民の保護の口実で軍事介入するというのが、最も考えられる筋書きだろう。
 この点、4選プーチンの任期6年のうち前半が最も危険な時期と想定される。

 

スターリニスト中国との対峙も
 しかし後半には、そうした危険な挑発行動も行き詰まるだろう。
 その1つの要因が、習近平の終身支配を決めたスターリニスト中国である。
 スターリニスト中国は、習近平の「一帯一路」構想で、旧ソ連圏である中央アジア諸国にも進出している。「一帯一路」とは、経済援助の名目で、中国資本でその国のインフラと経済を乗っ取り、政治的にスターリニスト中国に従属させる構想だ。
 つまりプーチンのすぐお膝元に、スターリニスト中国の力が及ぶことになる。
 脆弱な経済のロシアが、スターリニスト中国に対抗する術はないから、プーチンの訴えられるのは軍事的緊張を高めることだろう。
 つまりプーチンは、西でアメリカとEUと対峙し、南でスターリニスト中国と向かい合うことになる。
 その対決に、ロシアが耐えられるとは思えない。早ければ2020年代初頭には、プーチン支配に大きな転機が訪れるだろう。

 

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