アメリカ航空宇宙局(NASA)の土星探査機「カッシーニ」が15日、土星の大気に突入して、燃え尽きた(写真=大気突入前に送ってきた土星の輪。左に見えるのが太陽の光を反射する土星本体)。

 

 

土星を294周し、45万枚以上の写真を撮影
 打ち上げから20年、土星周回軌道に入って13年たっての命の燃え尽きである。
 カッシーニは、それまで土星を294周し、45万枚以上の写真を撮影した。衛星エンケラドスに生命存在の可能性を示唆するデータなども送ってきたが(15年3月14日付日記:「土星の小衛星『エンケラドス』に生命誕生の環境条件を確認、だが生命誕生は別の問題」を参照)、その使命を終えた(写真=エンケラドスから噴き上げる水蒸気柱を撮影)。

 


 カッシーニは土星の輪が写った画像を地球に送信後、日本時間の15日午後7時半ごろ土星の上空約1900キロの大気層に突入を開始。通信が途絶える直前まで大気の成分のデータを地球に送り続け、時速12万キロ以上の超高速で落下して消滅した。
 地球への通信に約1時間半かかるため、地球で最後の信号を捉えたのは午後8時55分だった。

 

打ち上げ後、スイングバイを重ね、7年かけて土星の周回軌道に到達
 カッシーニは、1997年10月にアメリカ、フロリダ州ケープカナベラル空軍基地から打ち上げられた。
 金星→金星→地球→木星の順にスイングバイを行って、2004年7月に史上初めて地球から平均約14億キロ離れた土星の周回軌道に入り、本格観測を開始。05年に小型探査機「ホイヘンス」を土星衛星タイタンに着陸させ、観測データを送った(写真=高度10キロから見たタイタンの表面。ホイヘンスからの画像をつなぎ合わせて作成した画像)。

 

 

2度も観測期間を延長する不死身ぶり
 驚異的だったのは、当初4年だったミッション観測の期間は2度も延長したことだ。
 14年4月3日にNASAが衛星エンケラドスに液体の水の大規模な地下海の証拠が発見されたと発表したことは、いわば望外の延長の成果であった。
 液体の水があることにより、「微生物が生息する太陽系で最も可能性の高い場所」の1つとNASAが報告した根拠になった。
 不死身と思えたカッシーニも、電源として使っていた原子力電池が残り少なくなっていて、軌道調整ができなくなる恐れが出てきた。原子力電池は放射性物質プルトニウムの崩壊熱を利用して発電する電池で、太陽から遠く、したがって太陽電池を利用できない木星以遠の惑星探査に不可欠な電源である。

 

最後は土星の分厚い大気層に突入させる
 カッシーニの調査から、エンケラドスとタイタンには生命が存在できる環境があるかもしれないことが分かったため、両衛星にカッシーニが衝突すれば、地球から微生物などが持ち込まれる懸念があった。
 そのためNASAは水素を主成分とする土星の大気に突入させて、流れ星のように消滅させる方法を採用した(想像図=土星の大気に突入する探査機カッシーニ)。

 


 最後まで異例の長寿で太陽系探査の重責を果たしたカッシーニと、それを開発したNASAとヨーロッパ宇宙機関(ESA)の研究者たちに敬意を表したい。

 

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