世界最高所のエベレストの山頂に立ったことはないが(これからも永遠に無理)、昨年から今年にかけて陸で世界の最低所の地と火山に行った。
標高マイナス50メートルのダロール火山
後者の世界最低所の火山とは、昨年訪れたエチオピア、ダナキル低地のダロール火山である。ここはすぐ隣が破綻国家のソマリアで、首都モガジシオの一画しか支配していない「政府」支援にエチオピアが軍を派遣している関係上、治安が悪い。
しかも周辺は砂漠で、何もない。観光拠点都市のメケレから車で5時間半もかかる。赤道直下に近くやたら暑いから、午前中に観光を済ますため、前日にキャンプ泊である(ホテルはない)。水も食料も、メケレから持っていく。足の便は極めて悪い。
そのダロール火山は、標高が海面下のマイナス50メートル。世界最低所の火山である。今も、あちこちで煙を噴き出す火山活動の地熱によって噴出する塩分と硫黄などが混ざった緑、黄、橙などの温泉プールがとても美しい(写真)。
塩が析出する荒廃地
アフリカのマラウイ湖から北はスエズ地峡からヨルダン渓谷にまで至るアフリカ大地溝帯の中に収まっているので、一帯は海面下になり、またマグマが噴出する。
火山の周囲の平坦なダナキル低地も、もちろん海面下だから、あちこちに岩塩が顔を出し、また浅いが塩湖も点在する(写真=上は岩塩採掘地、下は塩湖)。岩塩切り出しは、現地のイスラム教徒のアファール族の生業にもなっている。
緑は全く見られず、この世の果てのような荒廃地だ(写真=ダロール火山の中腹から見た塩砂漠)。
訪問には、カラシニコフを手にしたエチオピア軍の護衛付きである(写真=おそらく旅行社は、政府にガード料支払っているはずで、外貨稼ぎ・雇用対策の意味もあると思う)。
死海沿岸は標高マイナス418メートルの世界の底
世界最低所は、ヨルダン渓谷の底に位置する死海沿岸である。ビーチの標高は、マイナス418メートル。しかもここに注ぐヨルダン川の水が減っているため、年々、水位は低下している。世界の底、である。
これだけ低いと、標高817メートルのネボ山から降りてくると、焼けるように暑い。よく言われるように、100メートル上がると気温は0.6℃低下すると言われる。合わせた標高差1200メートルで計算すれば、7℃以上の気温差である(写真=上はネボ山頂から見た死海、下は死海ビーチ)。
暑く、そして降雨がほとんどないので、死海の周囲は荒涼とした砂漠景観である。ビーチ周辺に観光ホテルや水浴場があるが、沿岸では遊牧民のベドウィンが点々と見られる程度だ。
日本の恵み、冬季の降雪
日本の関東でも梅雨明けしたが、今年は空梅雨だった。それでも緑がまぶしいくらいで、源流域に冠雪する山も少ない荒川流域を例外とすれば、今のところ利根川流域のダムはたっぷりと水を貯めている。これは、少々雨が降らなくとも、利根川の源流域となっている上越山岳地帯に今冬は降雪が多かったからだ。
降雪もないエチオピアのダナキル低地、イスラエル・ヨルダンの死海沿岸の荒れ果てた景観に比べ、日本の自然の恵みに感謝である。
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