日本でついに墓に葬られた旧石器人骨が発見された。
 沖縄県教育委員会が19日午後、最終的な調査結果を発表した石垣市白保竿根田原洞穴遺跡の旧石器人全身骨格で、発見された洞窟は国内初の旧石器時代の墓地と推定された(写真=発掘調査の模様)。

 

 

 

旧石器時代の初めての墓か
 日本で1万カ所もあるとされる旧石器時代遺跡は、ほぼすべてが石器のみの出土だ。石器を作った旧石器人がそこで暮らし、やがて死んだはずだが、死者を埋めた土層は、火山灰の混じる酸性土壌で形成された日本列島の地質学的性質のために、骨は全く残らない。
 縄文人は死者を酸性でない貝塚に埋葬したために、縄文人骨は大量に見つかっているが、石灰岩洞窟という特殊な条件でない限り、本土では今後も期待できない。
 このため日本で見つかった旧石器人骨は、沖縄を除くと、浜松市浜北遺跡の1例(1万4000~1万8000年前)以外はすべて石灰岩の分布する沖縄に限られる。その沖縄県でも1万6000年以上前の旧石器人骨は10カ所の遺跡で見つかっているが、埋葬と確認された例はなかった。
 本土(北海道・本州・四国・九州)でも、石器のみ出土のため、その可能性を想定される曖昧な例は幾つかあるが、それを除くと明確に「墓」と推定されている遺跡はない。

 

完全に近い4号人骨は高身長
 それが白保竿根田原で、ついに旧石器時代の墓が見つかった。
 ほぼ完全な全身骨格が揃った4号人骨(写真)は、発見時の様子から、土中に埋葬されず、狭い岩陰に膝を上で折り曲げて仰向けにされた状態で安置された風葬に類した状態で葬られたものとみられる。

 

 


 年代は、放射性炭素の補正年代で2万7000年前とされ、これまで傑出した保存の良さで東アジア1とされた港川フィッシャー(八重瀬町)出土の港川1号骨格(写真)より約5000年古い。

 


 ただ比較的高齢の成人男性「4号」は、これまでの沖縄の旧石器人骨で推定身長の分かっている中では最も高身長で、推定165センチメートルと、港川1号より10センチ以上も高身長である。4号までを含めて港川人骨の例を基に、旧石器人は縄文人よりも低身長とか、港川人は旧石器人の島嶼化の例という従来観は、白保竿根田原4号人骨から再考を余儀なくされそうだ。

 

少なくとも19個体分の人骨群
 4号を含め、墓地と思われる白保竿根田原では少なくとも19個体分の人骨が見つかっており、ここから今後の詳細な研究で集団全体の形質と個体差などが追究できる。
 沖縄では、2012年に本島南城市サキタリ洞遺跡で約2万年前の石器と人骨などが発掘されるなど、発見が相次いでいる。サキタリ洞では、それぞれ年代の異なる層から人骨+貝器+ビーズ、人骨+石器、釣り針などが発見されている(16年9月26日付日記:「沖縄、サキタリ洞で、3.5万年前から1.3万年前までの継続的な旧石器人の居住が明らかに」、14年2月17日付日記:「南部アフリカ周遊:チョベ国立公園に溢れるゾウ;追記 沖縄サキタリ洞で旧石器人骨と貝器発見」、13年1月5日付日記:「石器と人骨、そして食物ゴミが同時に出土した1万2000年前の沖縄サキタリ洞遺跡は国内最古」を参照)。
 なお白保竿根田原洞穴の調査は、2012年から昨年まで行われていた。

 

昨年の今日の日記:「ビューポイントでの富士は霞むも見事なツツジ、シャクナゲの繚乱;追記 社民党、民進党との合流破談」