低コストの太陽光発電所が中東などで広がっているが(本年3月1日付日記:「地価・降雨量ほぼゼロのアラビアの砂漠で世界最廉価の巨大メガソーラーが続々建設」を参照)、太陽の恵みの乏しい北ヨーロッパでは、洋上風力発電所がブームを迎えている。

 

超大型風力発電所のコストは石炭火力発電所並み
 こちらは太陽光発電と違って、いつも風の吹く北海などの洋上なら、石炭火力並みの安定電源になる。北海は、遠浅の海に年中強風が吹き続ける。
 スウェーデン、デンマーク、オランダなど、北海やバルト海洋上に60万キロワット級、70万キロワット級といった超大型洋上風力発電所の風車が、続々建設されている(写真)。

 

 

 これらの風力発電の売電価格は、1キロワット時6円から8円で、石炭火力並みの低廉さだ。売電価格は、砂漠の太陽光発電所の倍だが、それでもこれだけ低コストなら二酸化炭素の出ないだけに、石炭火力発電を駆逐できる。

 

日本では低コスト化は難しい
 前記日記で紹介したUAEの太陽光発電所といい、北海・バルト海の洋上風力発電所といい、いずれも日本と無縁である。
 前者は、高地価の日本には絶対に立地しないし、後者は漁業権の補償金やら建築基準法やらの規制を受けて高コストになる。日本の風力発電の売電価格が10円台に下がることは、絶対にないだろう。
 固定価格買い取り制度の優遇(過剰優遇である)で、辛うじて事業化できるだけだ。

 

太陽電池も風車も価格競争力を失った日本
 この制約のために、太陽電池パネルと風力発電風車で、日本メーカーは世界の一線から落伍している。前記日記のUAEの118万キロワット級太陽光発電所の大陽電池は、中国メーカーのジンコソーラーだ。
 広さ7.8平方キロという広大な砂漠に敷き詰めるソーラーパネルは、中国メーカーの価格競争力にとうてい太刀打ちできないのだ。
 そして風力発電用風車も、世界市場はヨーロッパメーカーに席巻されている。

 

原発の意義はなお重要
 日本では、上記の日本特有の制約で、なお石炭火力発電と原子力発電が価格優位性を失わないし、世界的競争力を維持している。
 だが石炭火力は、低カーボー社会化の要請から、新設はますます窮屈になっていく。あらためてベース電源としての原発の意義は失わない。

 

昨年の今日の日記:「エチオピア紀行(23):珍しや、ジャガランダの紫の花のお出迎え、空港にて」