北朝鮮ならず者集団の独裁的頭目の金正恩が、長年つけ狙い、果たせなかった異母兄、金正男氏(写真)を、13日朝、警戒が薄いマレーシア、クアラルンプール国際空港で暗殺した。

 

 

女2人に強力な毒物を用いられる
 金正男氏は、拠点にしているマカオに戻る直前のことだった。下手人は女性2人、と言われ、空港の防犯カメラにも女が写っていた。その1人と見られるベトナムの偽造パスポートを持った女が、15日、逮捕されている。
 暗殺された金正男氏は、最初、「何者かに後ろからつかまれて、顔に液体をかけられた。頭痛がする」と言って、カウンターの係員に助けを求めてきた。すぐに空港の診療所に運ばれたが、その後、救急車で病院に搬送される途中、息を引き取った。
 ごく少量で人の命を奪う、かつてオウム真理教が用いたVXガスのような強力な毒物だった。

 

スターリニスト中国の庇護を受ける正男氏は金正恩にとり潜在的な敵
 金正男氏は、異母弟の金正恩にとって目の上のたんこぶのような存在だった。
 13年12月に金正恩に粛清された当時の北朝鮮ならず者集団ナンバー2だった叔父の張成沢とも通じ、とかく何やかやと文句をつけてくるスターリニスト中国の庇護下にあったからだ。
 むろんスターリニスト中国にとって金正男氏は、ことある時は、金正恩の後釜として据える大切なカードであった。血統を重んじる北朝鮮では、金正恩に代わり得る指導者には、金正日の長男の正男氏しかいないからだ(写真=父親の金正日と並んでカメラに納まった幼い正男氏)。

 

 

金正恩は最高指導者就任直後から正男氏暗殺を指示
 したがって張成沢もスターリニスト中国に通じていることを理由に反党分子として処刑されたので、スターリニスト中国に庇護されている金正男氏は許せざる仇敵だった。正男氏本人に、全くその気はなかったとしても、である。
 自身の権力を脅かす存在として生かしておけない、ということでもある。金正恩の残酷な性格がにじみ出ているようだ。
 韓国の情報機関によると金正恩は、金正日の死で最高指導者になった直後から、兄の正男氏の暗殺の命令を出していたという。

 

面子つぶされた習近平は激怒か
 それにしても、この暗殺は、スターリニスト中国にとって手痛い打撃だったろう。
 しかも12日のムスダン改の発射に続いて、13日の蛮行である。習近平は、激怒しているに違いない。金正男氏が拠点にしているマカオでは、スターリニスト中国の手先が厳重に警護していた。それが海外で暗殺されたのだ。習近平の面目は、丸つぶれである。
 ただ一部の韓国紙は、金正男氏が韓国に亡命を図っていたという情報に伝える。北朝鮮工作員が跋扈する韓国より、スターリニスト中国の膝元のマカオの方が安全なはずで、しかも韓国に亡命すれば、マカオ在住時のように海外に自由に行けない(海外に出たことが命取りになった訳だが)。にわかには信じられない。

 

金正恩の残虐性、極まれり
 金正恩の差し向けた刺客の女2人は、30年前に大韓機爆破テロを起こした金賢姫もそうだったように、支配党労働党の35号室所属の工作員だろう。女なら、男をハニートラップにかけられるし、ボデーチェックも緩やかだからだ。
 それにしても自分に代わり得る可能性のある者、ナンバー2を次々と粛清していく金正恩の残虐性は、祖父・金日成と、その師であったソ連・スターリンのようでもある。しかし大元であるスターリンも、親戚・姻戚関係者は殺さなかった。
 もはや祖父やその師のスターリンをも超えた残虐性の体現者が、金正恩なのである。

 

昨年の今日の日記:「重力波天文学の夜明け;アインシュタインの予言、アメリカの施設で100年目の実証」