伝説の相場師、投資家として名高いジョージ・ソロス氏(写真=昨年6月)が、昨年11月のアメリカ大統領選のトランプ氏のまさかの勝利直後に始まったトランプ相場で大損を被ったという。

 

 

昨年85歳で相場に復帰したが
 12日、アメリカ経済紙『ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)』が「Billionaire George Soros Lost Nearly $1 Billion in Weeks After Trump Election」の見出しで報じた。見出しにあるように、損失額は約10億ドル(約1150億円)にも達した。
 ジョージ・ソロス氏と言えば、1992年、割高と判断したイギリス通貨ポンドを売り浴びせ、買い向かうイギリス政府を屈服させ、ERMを脱退させたことで知られる、まさに相場師のプロ中のプロだ。
 ソロス氏は今年86歳と、高齢である。そのため、しばらく前から投資活動から引退し、慈善活動など社会的活動に移っていたが、昨年、再び投資の第一線に復帰し、その勘からトランプ氏勝利で「売り」にかけていたと見られる。
 短期間での10億ドルもの損失を出した詳細は不明だが、株空売り(プットオプションの売りも含む)だけではなく、債券先物買い、も組み合わせていたのだろう。

 

ポンド売りのかつての部下はトランプ相場で大儲け
 この間、92年のポンド売りで共闘した部下のスタンレー・ドラッケンミラー氏(世界的に著名なヘッドファンドマネージャー)は、ソロス氏と逆の相場を張り、トランプ・ラリーで大儲けしたという。
 相場の世界の厳しさ、難しさを痛感させられるが、かつての部下と違って、ソロス氏が大損したのはなぜだろうか、と考えた。

 

高齢による見切りの悪さ、そして政治的になり過ぎた?
 1つは、高齢による勘の鈍さと見切りの悪さであったろう。
 トランプ・ラリーが始まって、損失が出始めれば、プロの投資家なら一定のところで見切って損切りする。それができず、ムキになって相場の流れに逆らえば、大やけどをする。WSJによれば、ソロス氏がやっとポジションを手じまったのは、年末だったという。これでは、大損するはずである。
 もう1つは、ソロス氏が政治的になりすぎたことだろう。ソロス氏は、大統領選では早くからヒラリー・クリントン氏支持を表明し、トランプ氏勝利後は、自らの主宰するNGOを通じて反トランプデモを全米規模で仕掛けさせた。

 

政治的願望を相場に絡めて大損
 政治的願望を相場に絡めるのは、最悪の禁じ手だ。それを知らないはずはないソロス氏だろうけれど、やはり政治的願望に自らがとらえられ、大痛手を被って敗退した。それも、高齢のゆえなのだろう。若ければ、周囲の助言に耳を傾け、早くから撤退して痛手を最小限に留められたはずだ。
 今後、ソロス氏が相場の世界に復帰できるかは分からないが、やはり引退なさった方がおよろしいのではないか。

 

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