今、世界が一挙手一投足を見守っているトランプ次期大統領。トランプタワーにこもり、閣僚初め、4000人にものぼるという次期政権の政治任用人事を練っている。その脇には、首席補佐官に指名したラインス・プリーバス共和党全国委員長がつき、候補の月旦をしていることだろう。

 

安倍・トランプ会談を日本側に返事した男
 もう1人、トランプ次期大統領の「かげの補佐官」と囁かれているのが、トランプ氏の長女イヴァンカさんの夫のジャレッド・クシュナー氏(35歳=写真左。中央がイヴァンカさん、右が言わずと知れたトランプ氏)だ。彼もまた、選挙戦から今日まで、ずっとトランプ氏に付き従っている。

 


 17日朝、次期大統領のトランプ氏が、世界で最初に会談に応じた安倍首相が、マンハッタンのトランプタワーを訪れた際、トランプ氏により安倍首相が紹介された人物で、会談にもずっと同席し続けた。
 そもそも様々なチャンネルを通じてトランプ氏との会談を模索していた日本側に、電話で自邸のあるトランプタワーを会談場所に指定してきたのは、このクシュナー氏だった。日本側は、彼こそがトランプ陣営のキーパースンであることをこれで知ったのだ。

 

次の共和党大統領候補か、「反縁故法」で要職の起用は難しいが
 このことからクシュナー氏は、(娘婿という点は割り引いても)プリーバス氏よりもトランプ氏に近い最側近であることが明白だ。
 おそらく70歳という高齢のトランプ氏は、彼を政権中枢で使って帝王学を学ばせ、早ければ2020年、遅くとも2024年の大統領選の共和党候補に押し立てるつもりなのだろう。
 ただ問題は、家族を政府の要職に就くことを禁じる「反縁故法」があるため、クシュナー氏を公式の役職に就けることができないことだ。かつてケネディ大統領は、実弟のロバート氏を司法長官に起用したが、その後に制定された「反縁故法」で要職の起用はできなくなった。
 しかし様々な迂回手段を使って、クシュナー氏をホワイトハウスのスタッフに起用することを探るだろう。

 

敬虔なユダヤ教徒
 このクシュナー氏は、ただ「イヴァンカさんの婿」というだけではないようだ。トランプ氏の予備選からの選挙戦を切り盛りし、共和党主流派から総スカンを食らって人材難の選挙チームをまとめた。ハーヴァード大学(写真)を卒業し、ニューヨーク大でMBAも得ている。

 


 注目すべきは、かれがユダヤ人であることだ。共産政権を嫌って、祖父母が1949年にポーランドからアメリカに移住してきた。
 正統派ユダヤ教の戒律に従った食事をとり、安息日を守り、ニューヨークのアッパーイーストサイドにある上流階級向けのシナゴーグ(ユダヤ教の礼拝堂)に通うという。
 このため結婚に当たってイヴァンカさんは、ユダヤ教の戒律に従い、ユダヤ教に改宗している。

 

WASPでないのが……
 したがって彼が、外交に力を振るえば中東問題でトランプ政権の親イスラエル姿勢は決定的になる。
 ただユダヤ人であることは、大統領選挙やその前に上院議員選に出るに当たっては不利になるかもしれない。多数派のWASP(白人・アングロサクソン・プロテスタント)であることが選挙には重要で、例えば黒人のオバマが大統領になる前、非WASPの大統領はカトリック教徒だったケネディしかいなかった。

 

国家安全保障担当の副補佐官に保守強硬派の女性
 最後に、国家安全保障担当の副補佐官人事について。
 トランプ次期大統領は25日、同担当の大統領副補佐官に保守派の論客として知られる女性のキャスリーン・T・マクファーランド氏(65歳=写真)を起用すると発表した。マクファーランド氏は先に大統領補佐官に指名されたマイケル・フリン前国防情報局長とともに安保問題でトランプ氏を支える。

 


 マクファーランド氏は現在、保守系のFOXニュースのコメンテーターを務める。大学時代にホワイトハウスで働き始め、共和党のニクソン、フォード、レーガン政権に仕えた。キッシンジャー元国務長官の側近ともいわれる。

 

ISIS根絶に強硬姿勢
 そしてフリン氏と同じく、オバマ政権の対テロ対策を強く批判する保守強硬派で、自身のツイッターで「我々は最終的にイスラム過激派との戦争に勝利するだろう」と強硬論を主張している。
 2人の起用で、トランプ政権がISIS(自称「イスラム国」)にオバマ政権よりはるかに強硬な態度に出ることは決定的となった。
 ついでにスターリニスト中国にも、強硬であって欲しいと願う。

 

昨年の今日の日記:「宿泊したのは昭和9年開業の城郭風の蒲郡クラシックホテル」