よもや、まさか、のアメリカ大統領選の余波が、収まらない。
 全米で、トランプ「大統領」に抗議するデモが連日、続いている。これまで結果が出れば、潔くそれに従う、というのが、アメリカ大統領選だった。2000年のブッシュ対ゴアの対決で、得票数でゴア氏が上回ったのに、獲得選挙人の数でブッシュ氏が逆転勝利した後でも、このような全米規模の抗議デモは起こらなかった。

 

「私の大統領ではない」
 あの選挙で、ブッシュ氏は、超接戦で最後まで決着が付かなかったフロリダ州(獲得選挙人数は25)で公式認定のわずか537票差でゴア氏を退け、それまで267人の選挙人を獲得していたゴア氏を上回ることになった。フロリダの537票差という超僅差の勝利がなければ、ブッシュ氏は246人で終わっていたはずだった。
 ところが今回は、全米主要都市の街頭がトランプは「私の大統領ではない」というプラカードで埋め尽くされた(写真)。

 


 大統領選史上、未曾有衣のことで、トランプへの嫌悪感、忌避感がいかに強かったか、ということだ。これが、ヒラリー氏当選だったら、決してデモなど起こらなかっただろう。

 

安倍首相、世界で4番目にトランプ「新大統領」と電話会談
 しかし現実の世界は、リアルのパワーポリテックスの世界でもある。嫌いでも、超大国の新大統領と向き合わざるを得ない。
 トランプが勝利宣言すると、一斉に各国首脳からの電話会談の申し込みがトランプ陣営に殺到した。自国の未来のためにも来年から就任するこの超大国の新指導者に一刻も早く挨拶しておきたい、という思いからだ。これまでヒラリー・クリントン氏には誼は通じていたが、トランプはノーマークに近かっただけに、思いは強い。
 その中で、我が安倍首相は、10日朝に実に世界で4番目という早い順位で20分間、当選したばかりのトランプと電話会談に成功した。
 ちなみにトランプが首脳と電話会談に最初に応じたのは、中東の盟友イスラエルで、「壁」問題を抱える隣国メキシコが2番目、さらに中東の大国エジプト、と続いた。
 その4番目である。最強の同盟国イギリスのメイ首相(10日午後)や安保理常任理事国のフランスのオランド大統領(11日)よりも、早かった。

 

TPP説得できるか
 これは、新大統領になるトランプがいかに日本を重視しているかの表れだろう。そこでトランプと話せたことから、はやばやと17日にニューヨークでの安倍・トランプ会談が決まった。
 問題は、ここで安倍首相がこだわりを見せるTPP発効に、トランプ氏を説得、そこまで行かずとも好意的な触感を得られるかだ。トランプは、選挙中、大統領就任のその日にTPP離脱を主張していたからだ。

 

TPP霧散ならスターリニスト中国主導の通商秩序、知財・人権なども危機に
 ここでトランプから前向きどころかネガティブな答えが出ると、TPP霧散、スターリニスト中国主導の「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」が具体性を帯びてくる。
 前にも警告したように(本年10月16日付日記:「TPPは日米民主主義陣営が腐敗した覇権国家、中国に世界貿易秩序を作らせないために絶対必要」を参照)、東アジアばかりか世界の通商のヘゲモニーがスターリニスト中国に握られ、スターリニスト中国の望む通商(ばかりか知財・人権・文化などの)秩序が確立することになる。
 TPPは何としても、霧散させてはならない。

 

昨年の今日の日記:「維新との合流目指すバラマキスト民主党で来夏参院選に現職候補の不出馬表明相次ぐ」