TPPと関連法案の審議が荒れた。4日、衆院特別委員会は、与党の自民・公明と野党の日本維新の会の賛成多数でTPP承認案など可決した。民進・共産の野党2党が抗議する中での可決だった(写真=左端に座るのが山本有二農水相)。両党とも、強行採決だと息巻いているという。笑止である。

 

 

山本農水相の2度の軽口、ジョークに野党飛びつく
 本来なら10月月内に自然承認を目指して衆院可決を目指したが、10月18日に山本有二・農水相の佐藤勉・衆院議院運営委員長のパーティーの挨拶で、TPP法案を強行採決するかは佐藤委員長が決める、などと軽口をたたき、怒った野党が審議を止め、与党は月内断念に追い込まれた。
 これで会期延長をしなければ、自然承認が図れなくなった。
 すったもんだの末、やっと1日に、与党自民党と野党民進党が、2日の特別委採決、4日の衆院本会議での採決の日程を決めた。ここで、民進などのゴネも尽きた、と思われた矢先、同じ山本農水相が、同党衆院議員のパーティー挨拶で、「こないだ冗談を言ったら、(農水相を)クビになりそうになった」と冗談を飛ばし、これが報道されると、またしても野党が飛びつき、2日の特別委を流した。
 衆院採決・可決は来週に先送りされたが、与党は8日には衆院通過を目指す。

 

座を盛り上げるために冗談を言うのが悪いか
 山本農水相の脇の甘さがまたしても露呈した形たが、そもそもTPPに批判的なメディアが、関係省庁である農水省のボスが失言をするかもしれないと期待し、常に付いて回り、口を開けて待っていたのだ。そこに、冗談を言えば、また叩かれるに決まっていた。
 ただ見方を変えれば、パーティーでジョークを言うのは、紋切り型の挨拶では会が盛り上がらないから、当たり前とも言える。いちいちジョークで非難され、「辞任しろ」などと責められたら、座を盛り上げることもできない。笑いをとるためには、それくらいはするだろう。
 それをいちいちあげつらい、さらには日程党争で国会審議を止めるなど、野党、特に民進党の党利党略は目に余る。

 

会期延長すればどちらにしろ承認
 安倍政権がTPP承認を求めて注力するのは、8日投票のアメリカ大統領選挙前にTPPを批准し、アメリカに圧力をかけるという目論見があったからだ。来週にずれると、半ば目論見は外れる(それでも承認されないよりはずっといいが)。
 TPPが日本の国益に死活的重要であることは本ブログで何度となく繰り返してきた(例えば本年年10月16日付日記:「TPPは日米民主主義陣営が腐敗した覇権国家、中国に世界貿易秩序を作らせないために絶対必要」を参照)。共産党は日本の国益など眼中にない党だからさておき、民進党は許しがたいアホである。
 ただTPP承認そのものは、政権と自公の与党が不退転で臨んでいるので、変わることはない。会期を延長すれば、参院でいくら野党がごねても、1カ月たてば自然承認となるからだ。

 

会期延長は諸費用の無駄遣い
 しかし審議を止めて、会期を延長すれば、議員の日当と衆参両院の職員の手当などがかさむ。無駄な支出である。
 民進党にしても、衆院で5分の1しか議席を持たない極小野党だし、党内には労組出身者などのTPP賛成派も抱えている。はなから阻止できないことは分かっているはずだ。
 しかしスタンドプレーで存在感を高めることだけに執心し、国益を損ね、無駄な支出を強いる。

 

自社2大政党時代、強行採決などいつもあった
 だから与党は、いつまでも野党の揚げ足取りでのご機嫌取りに執着せず、審議が尽くされた段階で、それこそ山本農水相が軽口をたたいたように強行採決をすべきだったのだ。
 いったいいつから自民党は、物わかりが良すぎるようになったのか。
 かつて社会党が勢力を持っていた時代、強行採決はしょっちゅうだった。安保条約も日韓条約も、それこそ重要法案はすべて強行採決だったのだ。

 

昨年の今日の日記:「バルト3国紀行58:旧市庁舎の塔から『鳥の目』でラエコヤ広場とタリンの街並みを観る;追記 ロシア機墜落はISILのテロか」