いよいよ8日に迫ったアメリカ大統領選挙。その選挙戦で、共和党トランプの女性蔑視発言やセクハラなどの敵失で一時は当選間違い無しと思われたヒラリー氏が、トランプに急追されている。一部のメディアの世論調査では、トランプに支持率逆転まで許した。

世界経済揺るがすトランプ逆転当選の懸念台頭
 FBIのコミー長官が10月28日に議会への書簡でヒラリー氏の私用メールで違法の疑いのあるものが見つかり、再捜査する方針と伝えたことがきっかけだった。
 一時は、ヒラリー氏がトランプに支持率で10ポイント近くも差を付けたが、FBIの再捜査方針が伝わると、支持率は誤差の範囲内とされる2%以下にまで縮まった。ヒラリー氏は、土壇場でトランプに逆転される瀬戸際に立ったかに見える。
 マーケットもトランプ逆転に懸念し、ニューヨーク株式市場は大きく下げ、為替市場ではドルも弱含み、そのあおりで日本も株価下落・円高ドル安にシフトしている。
 本当に、ヒラリー氏はトランプに逆転されてしまうのか。

州ごとの勝者総取り方式で総得票数で負けても勝つ可能性も
 しかし選挙のプロは、そう見ない。なおヒラリー氏当選の確度はかなり高いとしている。
 それは、アメリカ大統領選挙の独特のシステムがあるからだ。
 他国の大統領選挙と異なり、アメリカ大統領選は全米の総得票数を争うのではない。州ごとに選ばれる選挙人の数を争う。しかもほとんどの州では、その州で1票でも多く取った候補がその州に割り当てられた全部の選挙人を獲得する。いわゆる勝者総取り方式なのだ。
 だから全米の得票数では負けても、獲得選挙人数では勝つ、ということも起こりえる。実際、2000年の共和党ブッシュ氏対民主党ゴア氏の大統領では、ゴア氏は全米得票数で54万票も多く得票したのに、獲得選挙人ではブッシュ氏に僅差で負け、大統領になれなかった。

世論調査僅差でも獲得選挙人数ではなおヒラリー氏リード
 たった1%ちょいの差でも、獲得選挙人数ではヒラリー氏がリードする展開は変わらない。
 しかもトランプの急追劇も、FBI再捜査方針が伝えられた直後の世論の過剰反応の可能性もある。週末の土・日で有権者も誰が大統領にふさわしく「ない」か、冷静に判断するかもしれないのだ。

当選してもヒラリー氏は1期のみか
 ただ、このような意外な脆弱さをさらけ出すクリントン氏は、当選しても決して強い大統領になれないだろう。不人気でもある。しかも4年後には73歳になる。
 したがって4年後、共和党がトランプのようなトンデモ男でなく、まともな候補者を立てれば、勝利する可能性は高い。ヒラリー氏は、共和党の父ブッシュ氏以来、1期で終わることになろう。
 世界の安全保障と経済にとって、民主党大統領より共和党大統領の方が望ましい、と僕は考えているが、8日の大統領選では世界を破局に陥れる懸念のある共和党トランプではなく、ヒラリー氏の当選を強く望む。
 しかしヒラリー氏1期が望めるので、4年後に期待しているのである。

 

 

 

 写真は、日光紀行の補遺写真で、上から中禅寺金谷ホテル玄関前と森の紅葉と田茂沢御用邸の庭に咲くクリンソウ。

昨年の今日の日記:「バルト3国紀行57:旧市庁舎の塔からタリン旧市街を観望;郵政3社上場、株価は堅調に推移」