イラク第2の都市、モスルを2年以上も恐怖支配していたISIL(自称「イスラム国)から解放するためのモスル奪還作戦が、17日未明から開始された。

 

進撃するイラク軍にISILは自爆攻撃と対抗
 攻撃に参加するのはシーア主体のイラク政府軍1万8000人とクルド人部隊(クルド自治政府の治安部隊ペシュメルガ)1万人で、イラク軍にはシーア派民兵も加勢する。この勢力は南から、クルド人部隊は東から、攻勢をかけている(写真=進撃するイラク軍)。

 

 


 政府軍系は、これまでに市の南方や東方を中心に数十の村を奪い返したとされる。またアメリカ軍関係者によると、作戦は順調に進んでいるという。
 これに対し、迎え撃つISILの兵力は4000~5000人と見られる。
 数では政府軍系が圧倒するが、ISILは太平洋戦争末期に旧日本軍が行った特攻のような自爆攻撃を繰り出している。

 

シーア派主体のイラク軍による市民への虐待も懸念
 さらに政府軍系がモスル市街地に接近すれば、ISILは市民を人質にして抵抗すると思われる。簡単にISILを駆逐できるとは思われない。
 さらに空爆で支援するアメリカ軍には、もう1つ別の懸念がある。
 解放した村や市街地からの脱出した一般市民に対し、シーア派主体のイラク軍が残酷な拷問や虐殺を行っているのではないかという疑惑が広がっているのだ。
 スンニ派のISILとスンニ派住民が多数のモスルとは、親和性がある。市民にイスラム法を強制し、従わない市民を虐殺していたISILへの忌避感がモスル市民には強いが、シーア派主体のイラク政府軍の支配は、もう1つの恐怖になっているという。

 

外国人テロリスト主体のISILは死しかない
 ISILの幹部は、すでにモスル守護を諦め、外部に逃走しているともされている。市内に残るISIL戦闘員は、孤軍奮闘を強いられているようだ。
 ISILの戦闘員の多数は、外国人部隊だと言われている。制圧した所では、政府軍が厳しい尋問を行っており、外国人と分かれば処刑も厭わない。
 つまりISIL戦闘員には、自爆攻撃しか手がないとも言える。
 この面でも政府軍のモスル解放は、かなりてこずるだろう。長引けば、モスル市民の恐怖がつのり、犠牲も増える。

 

モスル解放は対ISIL戦争の重要な転換点
 だがモスルがもし解放されれば、それはアメリカのイラク政策の大きな勝利になる。
 イラクにおけるISILの主要拠点がなくなるからだ。ISILはシリアで抵抗するしかなくなるが、もしイラク国内からISILを一掃できれば、アメリカはシリアの地上部隊としてイラク政府軍の助力を期待できるかもしれない。

 

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