1億円でも年間利子は税込みでたった300円という社債が出た。機関投資家向けで、個人向けではないが、マイナス金利政策もここまで来たか、の感がある。
 トヨタの金融子会社トヨタファイナンス(写真=本社の入る名古屋ルーセントタワー)が月内に発行する期間3年の社債の利率が、年0.0003%に決まったのだ。

 

 

100億円を投資しても年間利子はたった3万円
 発行企業のトヨタファイナンスの側にすれば、発行した250億円でも年間の利子負担は7万5000円だ。まさに実質的にゼロ金利、である。
 国債では、10年ものなど長期金利がマイナスになっている。しかしこれは、機関投資家などの保有者がいずれ日銀に転売する目的で額面以上に買い上げてマイナス金利になっただけで、誰も満期まで持ち切るつもりのものではない。日銀に転売すれば、確実に利益を得られる仕組みだ。だからマイナス金利になっているのだ。
 こんな極超低金利の社債を誰が買うのかと首をかしげてしまうのだが、運用難の国内機関投資家が買うようだ。額面で買っても、100億円投資で年間たった3万円の利子である。投資担当者の日給相当分くらいにしかならない。
 いくらマイナス金利時代でも、これはもう債権バブルと言うしかない。

 

個人物国債も超低金利の底ばいだがキャッシュバック頼み
 機関投資家の運用難は、個人投資家にも及んでいる。
 もう銀行や郵貯で、高利回りの商品はない。僕は先日、証券会社で個人向け変動金利10年物国債を買った。利率は、0.05%だが、これ以下には決して下がらない。逆に金利が上がれば、それに連れて利率は半年ごとに改定される。
 それだけではない。キャンペーンに応じたので、キャッシュバックがあり、それを狙ったのだ。1回限りだが、これだけで利回りは0.3%上昇する。

 

REIT、年利回り4%がゴロゴロ
 長期保有するのは、REITだが、こちらは今は軟調である。9月21日の日銀の金融新政策発表で、マイナス金利と国債買い入れのテーパリング(先細り)が意識され、実際にはほとんど上昇していないけれども、長期金利がいずれ上昇すると嫌気されているのだ。今や分配金による利回り年4%の物がゴロゴロしている。
 買いつけ手数料の不要な公募増資に応じれば、基準日の終値の2.5%のディスカウントで買えるので、次はこの買い増しを狙うつもりだ。ただしREITのIPO(新規公開)は狙わない。今、不動産価格が若干、割高気味なので、新規公開した投資法人は、新たに得た資金を運用しようと思えば割高の不動産を買わざるを得ないからだ。

 

絶対手を出してはいけない証券会社のラップ口座
 それに信用力のあるスポンサーをバックに持つ新規公開のREITは、ほとんどない。
 そのため上場初日から厳しい下げに見舞われる物がほとんどだ。この手のREITの中には、年間利回りが6%近くにも達する銘柄がある。それだけ安い、ということだが、それはマーケットが信用リスクを見ているからだ。
 ミドルリスク・ミドルリターンのREITもまた選別眼が必要だ。
 運用なんだからといって、間違っても手を出していけないのが某証券会社が力を入れているラップ口座である。多額の手数料を取られる上、運用を一任するファンドマネージャーの腕前はプロと呼ぶにはお寒い限りなので、組み入れ銘柄の下げのリスクも強いからだ。
 最近、ラップ口座を開いて多額の金を預けた人(主に素人の高齢者が多い)はほとんどマイナス運用に泣いているはずだ。
  そもそも老後の大切な資金を他人頼みにするなど、僕の感覚からは信じられないのだ。

 

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