僕が訪れた1月末、全く騒乱の気配も見えなかったエチオピアが、今、反政府デモと政権の弾圧の最中にある。

 

南部オロミア州で大規模な反政府デモ
 僕たちのツアーは南部には行かなかったのだが、その南部オロミア州でエチオピア最大の民族ながら政権から遠ざけられているオロモ族による政権への抗議デモが頻発しているという。
 今月2日には、治安部隊が発射した催涙弾から逃げようとした人たちが折り重なって倒れ、50人以上が死亡した。
 年率10%前後という高い経済成長を続け、日本企業からも注目されている東アフリカのエチオピアだが、メンギスツ共産政権を打倒したティグレ族主体の武装勢力とオロモ族に次ぐ第2の多数民族のアムハラ族が政権の実質を握る。いずれもエチオピア北部と中部に分布する。南部のオロモ族は、政治の中枢から疎外されているのだ。僕たちが周遊したのは、アムハラ族とティグレ族が暮らす北部と中部だった。実態は、見えなかった。

 

リオ五輪の男子マラソンの銀メダリストの抗議
 ティグレ族と多数民族のアムハラ族主体のエチオピア政府は、南部でのデモの高まりを受け、先週、四半世紀ぶりとなる6カ月間の非常事態導入を宣言した。政府はこれにより、外出禁止令を出し、情報の報道統制を敷き、人々を連行するのに従来以上に強大な権限を持つことになる。
 しかし、これがアフリカの宿痾のような武力を伴う部族抗争につながれば、エチオピアの経済低迷、解体へと向かう。すぐ北隣の南スーダン、かつて分離独立戦争を戦った北東隣国のエリトリアの二の舞にならなければよいのだが。
 ちなみに先に閉幕したリオデジャネイロ・オリンピックでは、男子マラソンで銀メダルを獲得したエチオピアのフェイサ・リレサ選手(オロモ族)が政府のオロモ族弾圧への抗議の意味を込めて頭上で腕を交差させるポーズをとってゴールし(写真)、世界的な話題となった。

 

 

カメラを向けるとポーズをとってくれる司祭
 さて、北部アムハラ州のラリベラの岩窟教会群である。
 こぶりな聖マリア教会の祭壇もカーテンがかかって、奥がのぞけない。
 その前に白い服の司祭が立っていたが、誰かがカメラを向けると、エチオピア正教の十字架の手にポーズをとってくれた(写真)。

 


 後で日本に帰って、ラリベラの岩窟教会群をネットで調べていたら、この司祭様が他の方のブログにも登場していた。同じ十字架を手に、居住まいを正した同じ姿で映っている。この司祭様は、エチオピア正教のなんたるかも知らない日本人観光客に、同じように接しているのだ。

 

土着化した聖母子像
 あらためて気がついた。
 岩をくり抜いて造った教会だが、内部はちゃんとアーチを成形している。さらにそれにレリーフ彫刻や意味不明の彩画が描かれている(写真)。

 

 


 絵の具が剥落した聖母子像もあった(写真)。これも、マリア様も幼子イエスも、さらに天使も、エチオピア人の顔である。パレスチナから切り離された、土着化した聖母子像である。

 


 ただしこれは、聖マリア教会ではなく、次に行った聖十字架教会なのかもしれない。記憶は、かなりあやふやなのだ。
 どなたかご存じの方は教えて。

 

昨年の今日の日記:「騙され続けた無邪気な池上彰教授の遅すぎる覚醒と今さらながらのベトナム戦争の真実」