赤色矮星であるために表面温度が低く、受け取る熱輻射量が少ない地球大のプロキシマb(写真)は、主星プロキシマ・ケンタウリから絶妙な距離で周回している。

 

 

水さえあり、時間さえかければ、生命体の自然合成は可能
 すると、裏側の極寒の世界は別にして、表側にはかなりマイルドな気候帯が広がっている可能性が高い。水があれば、水蒸気にも氷にもならず、液体で存在するのだ。おそらく表面には海が広がっているだろう。
 だから誕生後48億年のうちに、プロキシマbの海水中で化学反応が進み、生命が誕生・進化している可能性は十分にある。しかし知的生命まではいないはずだ(僕は、知的生命までの進化過程で起こる偶然の気の遠くなるほどの極小の確率の累積を考えると、どうしてもその存在を想定できない)

 

スターショット計画探査のターゲットへ
 それを探査する遠大な計画もある。イギリスの天才的理論物理学者スティーヴン・ホーキングらの提唱する「ブレークスルー・スターショット計画」だ。
 それは、宇宙空間に帆のある小型天体を数千個も打ち上げ、それを地上からパラボラアンテナ群でレーザー照射し(写真)、このレーザー光の圧力を推進力として加速させ、ケンタウルス座α星までの恒星間飛行を行うというものだ。

 


 8月24日のプロキシマb確認の発表の会議にも、計画責任者が出席し、プロキシマbというターゲットを喜んだ(写真)。

 


 正方形の帆は、一辺1メートルほどしかなく、中心に切手大の超小型カメラを含む観測機器を搭載する。コストがかからないために、1度に数千個もの探査機を打ち上げられる。ただし1度打ち上げたものは、制御ができない。へたをすると、あさっての方向に飛んでいく。

 

20代の少壮研究者なら現役の晩年に結果が分かる
 ただうまくいけば、探査機は光速の5分の1の超スピードで恒星間を飛行する。ケンタウリbなら、片道20年ほどで到達できる。
 しかし超小型観測機器の開発は、これからだ。これが何年かかるか分からない。ホーキングらは、20年ほどと見込んでいるが、合わせても最短で40年だ。撮影した画像を地球に送ってくるのに、電波では4.2年かかる。合計約45年だ。
 少なくとも20代の大学院生か少壮研究者でないと、生きているうちにケンタウリbの地上を見ることはできない。
 僕の場合は、絶望的だ(笑)。

 

宇宙に普通に存在する惑星系
 ところで上記のことからも言えるのは、ほとんどの恒星には惑星系が存在すること、そして太陽系のような惑星系は、むしろマイナーな存在だということだ。何しろ宇宙の恒星の7割は赤色矮星だと言われるから、プロキシマ・ケンタウリのような惑星系がスタンダードなのだろう。
 すなわち「星の数」ほど宇宙には惑星系があり、生命体が満ちているのかもしれない。しかし僕は、そこに地球の人間のような知的生命体の存在することにはなお否定的である。
 系外惑星と生命に関しては、以下の過去日記を参照されたい。

 

これまでの関連日記
16年10月10日付日記:「地球に最も近いプロキシマ・ケンタウリに生命存在可能な系外惑星プロキシマbを確認」
14年4月20日付日記:「生命存在の可能性を持つ地球に似た太陽系外惑星見つかる:ケプラー186f、ハビタブル・ゾーン」
12年2月27日付日記:「太陽系外惑星の探索と生物存在の条件(第4回=最終回);「水の惑星」の奇跡の淡水;ジャンル=天文学、生物学」
12年2月25日付日記:「太陽系外惑星の探索と生物存在の条件(第3回);低い確率の無限に近い累乗;ジャンル=天文学、生物学」
12年2月23日付日記:「太陽系外惑星の探索と生物存在の条件(第2回);「ケプラー」が開いた窓;ジャンル=天文学、生物学」
12年2月20日付日記:「太陽系外惑星の探索と生物存在の条件(第1回);ジャンル=天文学、生物学」

 

昨年の今日の日記:「南アの『人類の揺り籠』で古い形態と進歩的形態の混じる大量の人類化石発見;『ホモ・ナレディ』と命名」