ノーベル賞自然科学3賞の発表が終わった。日本は、発表第1弾の生理学・医学賞で大隅良典氏が単独受賞したものの、後の物理学賞と化学賞では受賞を逃した。

 

アメリカに次ぐ日本人受賞候補の層の厚さ
 しかし物理学賞でも化学賞でも、受賞候補は互いに分野が異なる数人もの研究者がいる。ノーベル賞は運のようなもので、運が良ければ栄冠を射止められるし、悪ければ見送られる。しかし層の厚さは、アメリカに次ぐので(層の厚さは桁違い)、来年も期待できる。
 それにつけても、今年も韓国とスターリニスト中国は、歯ぎしりしているだろう。
 スターリニスト中国の場合は、昨年、やっと屠呦呦氏が受賞したが、スターリニスト中国初のノーベル賞自然科学3賞なのに、屠氏は官許の研究者と言いがたく、おかげで中国の学界では評価は最低で、党・政府も国を挙げて祝うという雰囲気は全くなかった(15年10月20日付日記:「スターリニスト中国初のノーベル賞自然科学3賞の屠呦呦氏を包む中国科学界のジェラシー、中国ではもう授賞は無理?」、及び15年12月11日付日記:「中国初のノーベル賞理系3賞受賞の屠呦呦氏、今年の院士発表からも外れる;追記 ベネズエラ総選挙結果確定」を参照)。

 

共産党御用学者ばかりの中国、「ノーベル症」の韓国
 スターリニスト中国の学界は、共産党主導国家だけに、共産党政府の決めた学界ヒエラルキーを登るには世界的業績より、いかに党・政府に受けがいいかで決まる。屠氏は、全くその枠外だった。しかし逆に、党・政府の覚えめでたい研究者など、世界的水準から大きく劣後している。したがってスターリニスト中国の望む受賞者など、当分、出ないだろう。
 韓国は、またも歯ぎしりしているようだ。
 とっぱじめに大隅氏がノーベル生理学・医学賞の受賞の報が流れると、またしても日本へのやっかみがメディアを席巻した。失敬にも時には「日本はノーベル賞を金で買った」、「ロビー活動の結果」などという悔し紛れの声も聞かれるそうだ(ノーベル賞自然科学3賞大国のアメリカに対しては決して言われない)。このように常に日本のノーベル賞受賞を意識し、自国が取れないことに悩む韓国人の様子は「ノーベル症」と呼ぶのだという。

 

独創性を育む機会のない韓国の教育
 韓国の場合、日本を上回る受験地獄で、子どもたちは幼いうちから競争のまっただ中に放り込まれる。それだけに独創性を育む機会がない。
 昨年のノーベル生理学・医学賞受賞の大村智氏は、8月の日経新聞「私の履歴書」で書いていたように、中学までは家業の農作業に従事し、それで毎日のように自然に接した。高校では、スキー部と卓球部で主将を務めるなどスポーツに熱中した。だから東大・京大には無縁だった。しかし部を主将として引っ張ることで、後に研究者をまとめる統率力・指導力を養ったし、豊かな人間性を涵養した。
 こうした土壌が、日韓間の独創的研究力の差になっているのだろう。力も無いのに国を挙げて過熱するから、黄禹錫のようなES細胞捏造論文を出す輩も出てくる。こちらも、当分、ノーベル賞自然科学3賞の受賞者はないのではないか。

 

物理学賞は大本命の重力波研究者が漏れる
 ノーベル賞で意外だったのは、物理学賞である。
 今年は、重力波の直接観測に成功した重力波天文台LIGO(写真)に関与したカリフォルニア工科大学のキップ・ソーンとロナルド・ドレーバー、マサチューセッツ工科大学のライナー・ワイスの3氏が受賞する、とばかり思っていたからだ。

 


 ただノーベル賞選考委員会は、近年、素粒子・宇宙物理学関係と物性物理学関係とを交互に選考している。昨年は、日本人の梶田隆章氏ら2人の「素粒子「ニュートリノ」が質量を持つことを示すニュートリノ振動の発見」だった。
 その慣行からすれば、今年は物性物理学の番である。果たして、栄冠は物性物理学の3氏であった。周知のように「物質のトポロジカル相とトポロジカル相転移の理論的発見」の功績で、イギリス・アメリカの3人の研究者が受賞した(写真)。

 


 重力波の3氏は、来年回しであろう。すると来年の物理学賞は日本人の出番がないようでもある。

 

昨年の今日の日記:「バルト3国紀行50:タリン旧市街を観る展望台から『乙女の塔』を観て北口の『太っちょマルガレータ』へ;紀行」