昨年末、韓国との間で「最終的かつ不可逆的に解決」と確認されたうえで合意された慰安婦問題に関する日韓合意が、一部に懸念されたような事態になりかけている。
 ここにきて韓国側は、反日市民団体の盲動に動かされ、合意に含まれない「追加的な措置」に言及し出している。

 

日韓合意になかった安倍首相に謝罪の手紙を求める非常識
 「追加的な措置」は、韓国外務省報道官が9月29日、(安倍首相による元慰安婦への謝罪の手紙を出すことを求めた)元慰安婦支援財団に同調するように日本側に要求したものだ。
 昨年末の日韓合意には、安倍首相が謝罪の手紙を出すなどは一切、盛り込まれていなかった。これは、韓国側も了承したことだ。
 その合意を、過去に何度もあったように韓国側の国内事情で問題を蒸し返し、解決の「ゴールポスト」を自分たちの有利な方向に動かそうとしているのが、今回の外務省報道官要求なのだ。

 

すでに10億円は拠出した、後は韓国側が慰安婦像を撤去するのみ
 この「謝罪の手紙」要求に関しては、合意を結んだ岸田外相も、政権内外の一部の反対を抑え込んで合意を承認した安倍首相も、国会で「我々は(そのような要求に応じることは)毛頭考えていない」と明確に表明した。
 当たり前である。すでに日本側は日韓合意に沿って元慰安婦支援財団に10億円を拠出している。すなわち「日本はすでに合意を履行した。後は韓国政府が努力するだけ」なのだ。
 政府内には、韓国が日韓合意に含まれるソウルの日本大使館前の慰安婦像を撤去しないばかりか、合意にはない要求をしてきたことに、腹立たしさすら強まっている(写真=慰安婦像を前に日韓合意反対に気勢を上げる韓国挺身隊問題対策協議会の会員たち)。

 

 

「最終的かつ不可逆的な解決」の合意の骨抜きの策動
 ここで合意にない要求を受け入れてしまえば、韓国は次にまたさらに新たな要求を持ち出してくる。「最終的かつ不可逆的な解決」の合意の骨抜きである。
 今、韓国は一時は「蜜月」とまで言われた対スターリニスト中国関係が冷え込んでいる。北朝鮮ならず者集団の核実験や核ミサイル試射を止められない、止めようとしないスターリニスト中国に不信感が高まり、さらに韓国側の排他的経済水域(EEZ)内での中国漁船の不法操業とその取り締まりに際して中国漁民に死者が出たこと、さらにTHAADミサイルにスターリニスト中国が不満を募らせ、韓国側に「経済制裁」を実施しだしたことで、対中関係冷却化が進んでいる。
 その行き詰まりの突破口が「日本カード」だとすれば、お門違いも甚だしいし、決して受け入れてはいけない筋合いであることは前述のとおりである。

 

昨年の今日の日記:「悲惨な『老後破産』に陥らないために;TPP大筋合意」