ニューヨーク、マンハッタンで17日に発生した爆発テロは、死者が出なかったのは不幸中の幸いだったが、最悪の場合、多数の犠牲者の出る大惨事となっていたかもしれない。近くの国連本部では総会が開かれ、各国首脳が集まっていた。テロリストのプロパガンダとしては、最高の舞台だった。
2年前に肉親の暴力で逮捕された男、父親は「テロリスト」と呼んだ
犯人は、アフガニスタン生まれのムスリムだった。逮捕されたアフマド・カーン・ラハミ(写真下の上)は、この他にも同日、ニュージャージー州で発生した爆発にも関与したとみられている。19日、ニュージャージー州で警察官との銃撃戦の末に逮捕された(写真下の下=救急車で病院に搬送される負傷したラハミ)。
今回の事件では、FBIの捜査能力が問われる事態となっている。
というのは、ラハミは2014年、ニュージャージー州の自宅で兄弟を刺し、女きょうだいを殴った容疑で逮捕されたことがあるが、この時、父親は警察に対し、ラハミはテロリストだと語ったとされているからだ。FBIはその後の調査で、海外テロリストとのつながりは見つからない、として調査を打ち切っている。
ヨーロッパとアメリカは、「常在戦場」
しかしラハミは、この事件の5カ月前の2013年4月から14年の3月まで、1年間もアフガンとパキスタンに滞在していた。ここで、イスラム原理主義テロリストと接触していた可能性が濃厚で、今回のテロに使われた爆弾もここで学んだいう。
実際、逮捕されたラハミの持っていたノートには、オサマ・ビン・ラディンや「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)の元指導者アンワル・アウラキ(アメリカの空爆で死亡)のようなテロ煽動者に心酔する文章が残されていた。
アメリカには、過激なムスリムはいくらでも潜んでいる。これからも、日常的にテロは繰り返されるだろう。
ヨーロッパとアメリカは、今や「常在戦場」だ。それにつけても、ムスリムの大規模コミュニティーのない日本は、当面、テロの心配が無いだけ幸いだ。それでも、旅行でテロに遭難するリスクはある。
大統領選でトランプを利すムスリム・テロ
もう1つ懸念されるのは、この事件が大統領選挙に与える影響だ。一時、ムスリムに対する入国禁止などを提唱した共和党のトランプには明らかに追い風となる。
共和党のトランプは、19日、さっそくこの事件を例に引いて、現行移民制度を批判した。「こうした事件は、我々の極端にオープンな移民制度のせいで起きている。入国警備は国家安全保障の問題だ」と、穏健な移民政策を主張するクリントン氏を批判した。
一時、イラク戦争戦死者遺族への暴言などで支持率を急落させたトランプだが、9.11事件追悼集会で途中退席したクリントン氏の健康不安などで勢いを盛り返している。
近づく両候補による第1回テレビ討論会で、テロと移民は1大争点になりそうだ。
昨年の今日の日記:「中国の抑圧から亡命を求める真の政治難民であるウイグル族難民に無関心という世界の浅薄さは何?」