科学的に無知な大衆を扇動するには、おどろおどろしい言葉を最初に出すのが良い――まさにスターリニスト伝来の発表であった。
共産党都議団、ヒ素検出と発表したが、通常の地下水に含まれる程度
共産党都議団は16日、豊洲市場(写真)の青果棟下の地下空洞で14日に採取した水を、民間の検査機関で分析した結果、環境基準を下回る微量のヒ素が検出されたと発表した。これが、その例である。
環境基準は下回る、と断ったところで、「ヒ素検出」となれば、大衆は「ああ、やっぱり、危険なんだ」と、まず反応する。それを狙ったもの、と思考される。
ちなみに共産党都議団の発表した検出されたヒ素濃度は、1リットル当たり0.004ミリグラムで、通常の地下水に含まれる程度。わざわざ「ヒ素検出」などと発表する類ではない。
地下水が染み出ただけ
また人が毎日2リットル、70年間飲み続ける場合の環境基準は1リットル当たり0.01ミリグラムだ。つまり豊洲市場のたまり水を、他に雑菌などがないとすれば、多少の汚さを我慢して飲み続けたところで、何の健康被害もないということだ。地下水、井戸水と同じなのだから。
ちなみにヒ素は、原子番号33の元素で、鉄や銅などのように自然界に普遍的に存在する。生物への毒性は強いが、それだけに抗生物質など無かった時代には医薬品に使われていた物質だ。
また心配されたベンゼンやシアン、六価クロムも、検出されなかったという。
都議団は「たまり水が、床面からしみ出した地下水である可能性が高まった」と、盛り土をしなかったことを批判したが、今までは化学物質の混入の危惧を問題視していたのだから、問題のすり替えである。
安全性は証明された
それにしても、共産党が検査してくれ、安全性を逆に証明してくれたことは良かった。共産党としては、この検査結果を自党のプロパガンダに利用し、併せて小池都政の揺さぶりと党勢拡大に使おうと目論んでいたのだろうが当てが外れた格好だ。
共産党が安全性を証明してくれたのだから、築地市場は一刻も早く豊洲に移転すべきである。でなければ豊洲移転の準備が終わった業者の被害が拡大し、それは都への損害賠償につながる。すなわち都民の税金が無駄に消費されるということだ。
(17日、都はたまり水の検査を発表し、ヒ素は1リットル当たり0.003ミリグラム、六価クロムは同0.005ミリグラムが検出された、と発表した。六価クロムも同0.05ミリグラムの環境基準以下で、コンクリートに含まれていたものが溶け出したとみられる。他の化学物質は非検出だった。)
過去に微量に検出されたベンゼンは都市の大気中に含まれる程度
ちなみにこれまで都が豊洲市場の地下水を過去、何度となく測定した結果、問題とされたベンゼン濃度は最高で1リットル当たり0.007ミリグラムだった。土壌汚染対策法で決まっている地下水の指定基準値は、同0.01ミリグラム以下となっていて、すべてクリアして安全な範囲である。
しかもこの地下水を、豊洲市場では一切使わない。安全もへったくれもないのである。
ちなみに原油層やガス層意外、自然界に通常は散在しないベンゼンは、ガソリンを燃料にする自動車の排ガスなどに含まれるから、都市の大気中には普通に存在する。
自動車排ガスを浴びる築地市場の方がベンゼン濃度は高い
その大気中のベンゼンの環境基準は、1立方メートル当たり0.03ミリグラム以下、となっている。今年4月から5月に、豊洲市場の青果棟での測定値は、同0.019ミリグラム、水産仲卸棟で同0.012ミリグラムだった。
さらに小池新知事に命じられて、都はこの15~16日に、豊洲市場でベンゼン濃度を再測定した。最大で、同0.001ミリグラムにも達しなかった。
対して、同時に調べた築地市場では同0.0017ミリグラムで、豊洲市場のどこよりも高かった。築地は吹きさらしで自動車の排ガス由来のベンゼンが市場内に漂っているのに対し、豊洲市場は密封性が高い。
「安全」という実は非合理な「錦の御旗」
「安全」という錦の御旗は、これまで福島第1原発事故で繰り返し大仰に掲げられ、不要な「除染」などに数兆円単位の金が投じられ、さらに根拠の無い遺伝子組み換え食品排除、牛海綿状脳症(BSE:狂牛病)対策では不要な全頭検査の長期間の実施など、非合理な「対策」がまかり通っている。
NHKや朝日新聞がヒステリックに叫ぶ豊洲市場の安全性への危惧など、左翼のプロパガンダ以外、何物でもない。そうした幻想に税金を支出するのは、無駄でしかないことは前述のように明らかだろう。
当初予定どおりに豊洲市場に移転すべき筋合いが、盛り土問題の不明朗さでさらに混迷する状況は、憤慨に堪えない。
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