いつ崩壊するか、と西側諸国から期待感をもって語られてきた北朝鮮ならず者集団は、1990年代半ばの大飢饉を乗り切り、その後も金正恩体制の内部不和の最中、ミサイル発射と核実験を強行している。

 

血統の良い両班層も逃げ出す
 しかし最近、韓国政府の間では金正恩体制に動揺が広がり、ひょっとすると内部崩壊、という危惧とも期待ともつかない観測が浮上している。
 韓国政府が今回、特に重視しているのは、亡命・脱北者が従来の庶民・兵士レベルから、高い両班の上流階層にも広がっていることだ。彼らエリート層は、金王朝の中で体制に忠誠を誓い、その見返りとして比較的安定した生活を保障されていた。民衆がどんなに餓えようと、党・政府・軍のエリートが団結していれば、金王朝は安泰だった。
 先頃の駐イギリス副大使(公使)の亡命は、彼の父か妻の父が、ちゃっちい闘いだったけれども、ともかくも日本帝国主義に武力で刃向かった金日成のパルチザン闘争を共にした戦友だったというのは意外だった。金王朝に最も忠実で、そして最も固い支持基盤であった。そして北朝鮮国内では、様々な特権も付与されていた両班だったからだ。

 

金正恩に接近したくなくて「出世したくない」
 北朝鮮ならず者集団の支配党である労働党の「そこそこ偉い」層の間では、今、出世したくないと弱音を吐く連中が出ているという。スターリン時代以来、旧ソ連、中国に限らず、ライバルの同僚や直属上司の「不都合」を密告してでも少しでも出世し、権力に近づきたい、というのが、共産党員の共通認識だった。
 朝鮮労働党でも、少し前はそうだった。ところが金正恩の暴虐支配が固まって以来、雰囲気は全く変わったという。

 


 今以上出世すれば、それだけ暴君の金正恩に近づく。それは即ち、気まぐれの暴君の機嫌を損ね、粛清・処刑のリスクに近づくことになるからだ。

 

大量のエリート層の粛清
 実際、金正恩が絶対権力者に就いてからも、人民軍総参謀長の李英鎬、ナンバー2の党国防副委員長だった張成沢、義弟の全英鎮、総参謀部作戦局長の辺仁善、人民武力相(国防相)の玄永哲、副首相の崔英健、そして先の副首相の金勇進、と続く。昨年は100人以上、今年に入っても60人以上の党・政府・軍の幹部が処刑されている。
 かくて金正恩を取り巻くのは、たとえ雪が白くても金正恩が黒い、と言えば、おっしゃるとおり、と答えるゴマスリ、茶坊主だけ、となる。
 そんな連中に、金正恩の核武装化まっしぐらの路線を諫められるわけはない。たとえ国民の苦難と全世界からの憎しみが見えても、だ。

 

昨年の今日の日記:「3000メートル級の高山に挑めない潔癖症」

 

追記 脛に傷持つ蓮舫を代表に選んだ民進党の鈍感力
 昨日、投開票された民進党代表に、予想どおり代表代行の蓮舫が選出された。蓮舫は1回目で503ポイントを獲得し、2位の元外相・民主党前代表の前原誠司氏と国対副委員長の玉木雄一郎氏に大差を付け、1回目で代表選に決着をつけた。
 あらためて感じたのは、この党の危機意識の鈍さだ。前原氏が二重国籍問題で説明が二転三転した蓮舫を暗に指して、「リーダーは嘘を言ってはいけない」と述べたのは、その説明が常に疑念を持たれ続けるからである。最初は「生まれた時から日本人」と言い、次には「17歳(その前には18歳とも)に台湾籍を放棄した」と説明したのに、結果的には代表選挙の直前まで、台湾籍との二重国籍であったことを認めなかった。それなのに民進党は、敢えて蓮舫を選んだ。女性初の代表なので、話題を呼べるだろうとの判断からだとしたら、甘い。
 この問題は、今後、折に触れ、蒸し返され、さらに新たな虚偽のネタを週刊誌に探られ続ける。脛に傷持つ人物に、信頼は生まれないだろう。